私は自分でしこりに気づいた訳ではなく、たまたま定期検診で病変が見つかった。
先生は、この大きさじゃ触っても分からないと言っていた。
でもよくよく触ればその硬さが分かるのかもしれない。
看護師さんは、よく触って変化がないかチェックした方がいいと言った。
でも私は「ここにがんがある」ということが怖くて恐ろしくて、どうしてもその事実と向き合えなかった。
しこりに触れた途端心が耐えきれなくなってしまう気がして、とてもじゃないが触ることができなかった。
何の自覚症状も無く、しこりに触れることもなく、このまま手術で取り除けると思っていたが、がんはそんなに甘いものではなかった。
ちょうどMRIを撮ったあたりから右胸にピリッとした痛みが走るようになっていた。
その時は深く気にしていなかった。
病は気から。
右胸に意識が集中してしまうから痛く感じるだけ、そう思っていた。
でもあのMRI画像に写った白いもやもやを見てからは、病は気からという言葉だけでは片付けられなくなった。
だんだん痛みの範囲が広がり、頻度も増えた。
ピリピリチクチクとした痛み。
がんって痛いんだ、ということを痛感した。
痛みは右胸だけでなく、首や右腕にも感じるようになった。
そして脇にも。
脇に痛みを感じるとどうしても「転移」が頭をよぎってしまう。
その時が一番キツかった。
がんがここにあるという事実をまざまざと突き付けられているようで、どうやってもごまかすことはできなかった。
折れてしまいそうな心をなんとか保とうと必死に深呼吸をした。
この頃はほとんど眠れず、やっと眠ったと思っても、すぐ目が覚めてしまった。
夢の中では病気のことは一切出てこなかったので、できればずっと寝ていたかった。
しかしそうはさせてくれない。
起きてすぐにピリピリと痛みを感じ、「私はがんなんだ」という現実に引き戻された。
心も体も、あの白いもやもやで蝕まれていった。