咄嗟にベランダに隠れた後輩ちゃん。
彼の態度にも腹が立ちつつ
ベランダの扉を3回ノックすると
彼の方は驚いた顔をしたが
女性の方はビクともせず
ベランダのドアの前まで
歩いてきたのが見えたので
後輩ちゃんはカラカラと
ベランダのドアを開けた。
彼
「えっ!!!エェッ!!
ちょっと、なんでそこにいるの?」
後輩ちゃん
「こっちが色々聞きたいよ。
この人誰?私は
先に帰って待ってただけだよ。」
彼
「・・それはっ」
女
「じゃっ、私帰りますね。」
顔色ひとつ変えずに、淡々と言う。
後輩ちゃん「はっ?」
女
「私、巻き込まれただけですよね。
だって彼、
彼女いないって言ってましたから。
ね、そうだよね。」
彼
「えっ、、いやそれは・・」
女
「それに私、今日初めて彼に
会ったわけじゃなくて
今まで彼に何度も誘われて口説かれて
それでやっと今日初めて
家に来たんですよ。
嘘つかれたのは、私も同じですから
腹立ってます。」
後輩ちゃん
「・・・・」
たっ、確かにそうなのか?
と、後輩ちゃんは思う。
女
「彼女さんも、こんな人と
別れた方がいいですよ。
だってこの人ほんっとうに
すっごいマメに
口説いてきてたんですから。」
後輩ちゃんは、
立ち尽くしている彼を見る。
後輩ちゃん
「・・・・・・なんなの
どう言うつもり?
この人とうまく行ったら
私と別れようとしてたの?
そんなそぶり、一切なかったけど。」
彼
「・・ごめん、、
・・・2人とも
魅力的だったから・・」
女
「私は、そんなこと言う人嫌いです。
・・彼女さんは
それでもこの人がいいなら
許して付き合ってあげたら
いいじゃないですか。
でもこの人、
また同じことしますよ?
まぁもう、私には関係ないですけど。
それじゃあ、お邪魔しました。」
その人はそう言うと、
スタスタと玄関を出て
本当に帰ってしまった。
なんて潔い人なんだろうか。
こういう状況に慣れている
プロの方かと思っていたが
彼女も彼に、
騙されているだけだった。
そして2人部屋に残された。
後輩ちゃん
「・・・・・・」
彼
「ごめん、、魔が差した。
好きなのは後輩ちゃんだけだから
もう2度としないよ。
だから、、」
後輩ちゃん
「いや、私こそ合鍵があるとはいえ
勝手に入っててごめん。
驚かそうと思ったけど
こんなやり方、ダメだよね。」
ん、後輩ちゃん、許すのか?
と思ったら
後輩ちゃん
「でもおかげであなたの本性も見えた。
ここで許すなんて私自身が惨めになる。
さっきの彼女のいう通り
私も、あなたはまた
同じことすると思ってるから
じゃあね。」
後輩ちゃんもそう言って
一旦ベランダで自分の靴を取って
玄関にゆく。
彼
「待ってよ!本当にごめん!
別れるなんて嫌だよ!」
後輩ちゃん
「あなたにそんなこと
言う資格ないと思うから。」
◆
後輩ちゃん電話
「って言って、部屋を出ました。
その後すっごい電話きてますし
メールも入ってますけど
さっきブロックしました。
腹も立つし、悔しいですし
あんな男のことでも
好きだった自分が悲しいですけど
勉強になりました。」
彼女はそんな苦い経験をした後
その次に出会った穏やかな年上の男性と
あっさり結婚をした。
1度だけお見かけしたが
これまで彼女が付き合っていた
少し派手目な男性とは全く違うタイプの
むしろ地味で、堅実そうな方。
今でも時々連絡を取り合う間柄だが
2人の子供を産んで
落ち着いたママになっている。
もう10数年も前の話で
私はこの頃から
この手の相談をされがちだったんだなと
遠い記憶を思い出しながら
大事なのは、その経験を糧に
自らその過ちや悪縁を断ち切り
前に進むことだと、やっぱり思うのでした。
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