登場人物
● 芽衣 ：今回の物語のキーとなる人と私を、出会わせた私（パンダ）の高校時代からの友人。
●小林成美：ホームパーティーで私に話しかけてきたキラキラ女子。５歳の息子さん（ハルキくん）がいる。しかし、その後私に相談のメールがきて…
● 小林瑛太：成美さんの夫で、ジェシカのビジネスパートナー。どうやらモラハラ気味なようだが…
● 萌さん : 成美さんの友達。成美さんが不倫をしていると、私に伝えてきたが、その真相はまだわからない。
● ジェシカ：瑛太と同じ会社で働いていて、瑛太の上司にあたる。今後しばらくの間、芽衣の仕事のパートナーになる予定。
その日の朝、私は起きてすぐ
パソコンのメールを開いた。
成美さんからの
その日日記は、毎日続いている。
【●月●日 その日日記
昨日息子を寝かしつけていたら
一緒に寝てしまったけれど
1時に起きても夫はいなくて
携帯に、連絡は来てなかった。
それから眠れなくて
携帯でずっと
モラハラについて検索していた。
私はしばらく、
自分がモラハラを受けているという
自覚がなかったかもしれない。
付き合っている頃の夫は
優しくて、頼りになった。
それがいつの間にか
私の方が夫に、依存していたのか。
仕事を辞めたことも
結婚したことも、
子供を産んだことも
自分で選択したと思っていたけど
望んでいたはずだけど
よく考えた見たら、
全て夫が、賛同したことばかり。
夫にダメだと言われたことも
私が望んでそうしているのだと
思っていたけれど
今思えばやっぱり
決めたのは夫。
昨夜そこまで書いて、
夫が帰ってきた物音で
寝たフリをした。
夫はハルキの寝顔も見ずに、
そのままベッドに
倒れ込むように寝た。
ここまで眠っていたら
すぐには絶対に起きないと思って
まずは携帯を見たけど
やっぱりロックがかかっていた。
そのあと夫の鞄を持って
リビングに出て
ポーチの中をみた。
コン○ームの数は2個。
1個減っていた。】
成美さんの日記には、
減ったゴムの数を数えたところで
終わっていた。
気持ちが一切、
書いてなかったことが
むしろショックの大きさを
物語っていて
それがリアルに苦しかった。
真夜中にこんなものを
たった1人で発見して、
デジカメに写す成美さんの気持ち
どれほど辛かっただろう。
ちなみに、
成美さんからもらったメールには
デジカメの写真の添付がある。
それはもちろん、
成美さんのデジカメから
証拠を消すためだ。
私は成美さんに、
昨日のジェシカさんの話を
メールに書いて送ろうとして
やめた。
まだ何も確証がないことを
こんなしんどい時に
書くのは辞めておこう。
そう思った。
◆
翌日の朝も、成美さんからは
メールが届いた。
【●月●日 その日日記
昨日夫が夕飯時に帰ってきて
すごく上機嫌だった。
そして夕飯を食べながら
「今度、旅行に行こう」
と言った。
ハルキがすごく喜んで
「どこに？」と聞いたら
「母親が、
セブ島に行きたいって言ってる。
インスタの写真も沢山撮れるし
いいよな。
ちなみにそのうち1日は
ちょっと1人で出かけるから」
と。
セブ島に家族で行って、
1人で出かける？
私にお義母さんを任せたままで？
っていうか、本当にお義母さんが
セブに行きたいって言ったの？
「ハルキはそういうの
まだわからないし、
それならテーマパークが
あるようなところに
行ってあげたい。」
と言ったら
「テーマパークの方が
まだ意味わからないだろう。
とにかくセブに行くぞ。
もう決めたから。」
そう言って、自分の部屋に
行ってしまった。
今朝、夫が
お風呂に入っている間に
ポーチの中を見たら
夜中に減っていたはずの
コン○ームが、
また3つに増えていた。」
成美さんの、
無機質な文章の書き方が
私に、より深い悲しみを
伝えていた。
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