今日のお話は… 花街ならではの法則です。
先日、テレビで花街が舞台になっている2時間ドラマのサスペンスを観ていました。
ドラマの内容はサスペンスのテーマ曲にピッタリの冷や冷やドキドキだったのですが、
なんか、しっくりこないんですよねぇ…。
よくよく考えてみると、その理由が明らかに!
仕込さんと舞妓さんの会話で
「うちらも早う、○里姉さんみたいになれるようにきばらなあかん。」
と、話されていたんです。
普通に聞き流していても意味は通じるのですが、
私・みやこにとっては、とても違和感のある会話でした。
京都の花街では、
○里姉さん という呼び方はしません。
○里さん姉さん と呼ばれるのです。
<お姉さんと>
ついでにお話しますと…
芸舞妓さんが、お姉さん・お母さんと会話されているのを耳にする機会がありますが、
どのような基準で呼び分けされているかご存知ですか?
年齢には関係ないのです。
簡単にお話しますと、芸妓さんを現役でされている方であれば、
20才代の方でも、80才の方でも… 〈 お姉さん 〉です。
お茶屋さんやお料理屋さんの女将さんは、元芸妓さんであっても… 〈 お母さん 〉です。
また、そのお茶屋さんやお料理さんの息子さんなどにお嫁入りされてきた方は、
年齢がまだ若くても… 〈 若いお母さん・小さいお母さん 〉です。
ですが、長年お店にいらっしゃる方、女将見習いなどでいらっしゃるご結婚をされていない方に対しては、
年齢に関係なく… 〈 お姉ちゃん 〉になります。
※ここでのポイントは、〈 お姉さん 〉ではなく〈 お姉ちゃん 〉と呼ばれることです。
〈 お姉さん 〉は、基本的には現役の方に対して使われるのです。
<大きいお姉さんと>
花街で修行を始める仕込さん達にとっては、
「この方は、お姉さん? お母さん? お姉ちゃん?」と覚えていくのも、
とても大切な関門で、一苦労だそうです。
仕込さんの時代には、現役の年配の芸妓さんに向かって、「お母さん、おおきに。」と言ってしまい、
完全に無視されて〈 お姉さん 〉だった…と失敗に気付いたことがあるとか。
「今やし笑い話にできますけど、その時は、血の気が引く思いやったんどすえ…」と、
知り合いの芸妓さんからお話を聞いたこともあります。
芸舞妓さん方は、さまざまな花街なりの法則にのっとって、それはそれは巧みに使い分けられています。
おまけの話をつけくわえますと…
お料理屋さんやお茶屋さんのご主人は〈 お父さん 〉
お座敷に来られる男性の場合は、比較的若い方は〈 お兄さん 〉
年配の貫録のある方は〈 お父さん 〉と呼び分けされることが多く、
代々花街に出入りされているお家の息子さんなどが所帯をもたれて年齢を重ねられ、
〈 お兄さん 〉から〈 お父さん 〉と呼名が変わった時に、祝杯をあげられた…
という方もいらっしゃったらしいです(笑)
ちなみに、祇園甲部での着付けやお家の用事をいろいろとされる男衆(おとこし)さんのことは、
年齢に関係なく、〈 お兄ちゃん 〉と芸舞妓さん達からは呼ばれたはります。
最後に縦社会のシビアなお話をしますと…
花街では、置屋さんへ仕込さんに入った年月日ではなく、
舞妓さんになるお店だしの日の順番がとても重要なんだそうです。
<お店だし>
仕込さんに修行に入ったのは自分の方が早くても、お店だしの日が一日でも早かった同期の子へは、
花街にいる限り一生、〈 ○○さん姉さん 〉と呼ばなくてはいけないことになるのです。