5月になると「こいのぼり」は制作の定番です。

こいのぼりは単純な構造でありながら、風をはらんで大きく身をくねらせて泳ぐ姿は魅力的です。

 

天気の良いに園庭に上げる前のこいのぼりを頻りに触れたがる子ども、スルスル昇っていく、大人の背丈以上の大きなこいのぼりを見上げる子どもの目は輝いています。

 

 

 

 

 

そんな魅力的なこいのぼり、5歳児には特別に関わらせてあげたいな…と。

この子たちはコロナ期間中に特に大きく影響を受けた世代で、様々な活動が制限され奪われています。なので、意識してこれから奪われた経験の機会を埋め合わせをしてあげるべき…

 

巨大なこいのぼりを作ろうと、備品倉庫の中で見つけた、使わずに余っていた壁紙。フープと組み合わせると、丁度いい強度のある巨大こいのぼりが作れそうだと早速広げてみました。

 

 

 

 

壁紙の汚れ防止加工でツルツルした表面は、テープの粘着が効かない素材で少々工夫が要りましたが、透明テープとクラフトテープで組み上げました。

壁紙は横からの割ける破れには弱いですが、模造紙や画用紙よりも自重を支える強度はありそうです。

 

 

 

 

 

園庭にロープを張り、ロープに直にこいのぼりの重量がかかると、そこから破れていきそうなので、圧力を分散させるために段ボールで三角柱を組み、それにロープを通して巨大こいのぼりを載せました。

子どもが作業しやすい高さにすること、こいのぼりの下面は塗りにくいので、制作中にずらして高さが得られるようにもしています。

 

巨大こいのぼりを前にして子ども達の反応も上々、事前連絡から絵具を使える期待をしていたようです。

「汚れてもいい服をご準備ください」という事前の家庭への連絡は、子ども達にとって特別活動に期待できる嬉しいサインのようです。

 

 

 

 

 

 

今回は共同制作なので、3つほどルールで。

・筆で円を描くこと、円環の線をきっちり繋げて円にする。

・他の友達が描いたものの上からは塗り潰さないこと。空白を見つけて大なり小なりの円を描く。

・筆の持ち方、使い方、周囲の状況を見ること。

約束事のそれ以外はあまり事細かな注意をせず、のびのび描いてもらいました。

 

絶好の青空、本物のこいのぼりが泳ぐ下で、屋外で解放感を感じ、絵筆を大きく動かし、自分たちの手で巨大なこいのぼりの身体に活き活きと描き込む。やらされているのではなく、自分の意思で表現する。

 

 

 

 

今回は、3色、黄→黄緑→青と順に色を変えていき、混色しても濁らないような色を選択。筆はその都度洗わないように進めました。

筆を洗わない理由は、絵具が水っぽくなるとこいのぼりの紙やテープが弱まって破れて剥がれていくかもしれなかったからです。垂れない程度に絵具を溶いておきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

約束は守れて、友達の描いた上から塗り潰すことはなかったようです。

元気旺盛な子どもが楽しくなり過ぎて、見境なく表現活動をしだすと控え目なタイプの子どもの表現活動を委縮させてしまうことがあるので、みんなで楽しむためにはある程度のルールやセーブは必要です。

 

好き放題させると収拾がつかないほど周囲を汚すことにつながりますから、そうならないためにダイナミックな活動をして気分を解放させつつも、禁止や制限ばかりで保育者中心のつまらない表現誘導にならないように匙加減が必要です。

 

20人の子どもを10人づつの2グループに分け、巨大こいのぼりの左右面を広々使い、それぞれ筆で円環を描き込みました。全体的に委縮している子の姿も見られず、逆に「この子は大胆過ぎで、ちょっと配慮が必要かも?」と予想していた子も落ち着いて取り組んでいました。他の友達が描いていない空白部分を探しながら描き込むことにゲーム性があり、熱心に没入しているようでした。

共同制作では、参加するみんながそれぞれ楽しめるように進めたいです。