ニュージーランドに着いて早々最初のフラット*メイト(Flatmate) だったアフガニスタン人と恋に落ちました。
今思うと恋大き乙女だったんだなぁ。(別の言い方で”単純”?)
彼は結婚を真剣に考えた2番目の恋人でした。
とは言っても最初からそんなつもりがあったわけではありませんでした。
ニュージーランドに到着して1週間以内にする、と決めていた事の一つが、フラットを見つける事。
ワーキングホリデーセンターの掲示板を見て、良さそうな、自分の条件に合うフラットを見つけ連絡をすると、訛りのある英語を話す男性の声。うーん男性のフラットメイトはどうかなぁ。と思いながらも、とにかく部屋を見学する事に。
到着すると、なんとフラットのテナント* (tenant)だけではなく、もう一人のフラットメイトも男性。しかも二人ともムスリム(イスラム教徒)。私の全く未知の世界で、一瞬ひるんだのですが、家を見てみるととても清潔できちんと整理整頓されており、まるで男性だけの世帯とは思えず、部屋も広く明るく庭に面していて、その上そのテナントはとても話しやすく親日家で、フレンドリー。私の ”全く問題なし” の直感を信じてそこに決定。
そのテナントはイラン人(彼は頑固に「僕はテヘラン人だ」と言っていました、、。)そしてもう一人はアフガニスタン人。二人は全く対照的な性格で、イラン人の彼(S)はとてもおしゃべり、話し出すと止まらない。アフガニスタン人の彼は(K)とても無口で落ち着いている感じ。(実は最初は恥ずかしいのと緊張しているのとで話せなかったそうです。。)
二人と一緒に暮らすうちにイスラム教の事を沢山学びました。それまではステレオタイプのあまり良くないイメージを持っていた私にはかなり衝撃的でした。そして、国や地域そして人により、ムスリムとは言え、かなりの違いがあるのにも驚きました。(これは二人を見ていて)
まず、すぐにフラットが清潔でいつも整理整頓されている理由がわかりました。
身の回りや自分の身体が汚いのはアラーの神にとても失礼な事なのだそうです。これは本当に快適でした。
後ほどSはかなり遊び人である事がわかり、ビックリ。遊びに行くと一晩帰宅しない事も多く、それ以上にショッキングだったのは豚肉そのものは勿論食べていませんでしたが、豚肉の成分が入っているかどうかは全く気にしていませんでした。敬虔なムスリムのイメージは全くなし、、、。
対してKは豚肉は勿論、豚肉が入っていないと確認できない食べ物も一切口にせず、食べるものは全てハラル(Halal)*のもの。とても真面目でSとは正反対。ムスリム料理(スープのようなもの)を食べさせてくれ、ハラル肉の美味しさにもビックリ!それからは私もハラル肉を購入していました。なんだかんだと優しく、どこか悟ったところのあるKにだんだん惹かれていきましたが、ムスリムは結婚前にガールフレンドを持つ事は御法度。
ところが、Kは実は難民で(ニュージーランドには難民ビザというカテゴリーがあります。)NZにたどり着く前にインドネシアのバリ島にも少し滞在していたそうで、その時に童貞を失ってしまったそうです。(なんだか因縁のあるバリ島です。。。)
彼はいつも自分の事を "Sin(罪悪)だ” と言っていました。一度童貞を失ってしまってからはもう制御をする事が出来なくなるから、他のムスリムの若者には僕のようにになって欲しくない。というのが口癖でした。
で、そんなこんなで付き合い始めたのですが、これがまた非日常な事。
付き合い始めた頃にショッピングセンターに一緒に行った時に、ある店にあったネックレスを見て可愛い~と(私が)言った、その次の日、Kが仕事から帰宅すると、なんとそのネックレスを私にプレゼントしてくれました。
ビックリして理由を聞くと、「だって君が可愛いって言ってたから。」え??それだけで?
聞くと彼が信じるムスリムの文化では女性を大切にしなければいけないらしく、女性が欲しいもの・したい事を全て叶えてあげる事が男性の役割なんだそう。
なので、私が欲しいもの=買ってあげる、になるらしい。。。嬉しかったけれどその後は一緒にいる時の言動に気を付けるようになりました。とにかく扱いがまるでプリンセスなのに最初は戸惑いましたが、良いことばかりでもありませんでした。彼の遠い親戚も移住しているこの地で私たちのことがバレてしまうのは大変なこと。
車での移動は助手席の私が外から見えないようにリクライニングシートを真っ平らで走行。
シティーの近辺に二人で行く時は人が多い場所限定(ショッピングセンターなど)。
二人だけになれるのは最低車で30分くらい走った郊外/自然の中など彼の親戚がいない場所もしくはいたとしてもすぐに私たちが気付くような見通しの良い場所。結構制約がありました。
結局は彼のビザの延長が却下され、アフガニスタンに帰ることになり、私自身がアフガニスタンで暮らすことは考えられなかったので(バリ人の恋人で学んでます)、お互い無理やり別れました。ムスリムの花嫁さんは家族(両親)が選ぶということはよく知られていると思いますが、彼の場合、第二の花嫁は自分で選べるらしく、彼は私を第二の花嫁にしたかったようです。
これも、よくネガティブに言われますが、彼のムスリム文化では全ての花嫁を同じように幸せにしなければならず、プリンセス扱いをする為には結局は健康で体力もあり(いろんな意味で)お金持ちのみが二人以上の奥様を持てるそうです。実は彼は現地では実業家だったのでかなりの土地を持っているらしく、問題なく私を二人目の奥様として迎え入れられたそう。
それで彼の、意思が強く落ち着いた性格に納得。決して怒らず、私が不満をぶつけて家を飛び出すと、必ず私を探し出し、隣に座って「話そう」。私の気がすむまでしっかり話を聞き、結局彼の悟りのある言葉に癒されて終わると言うパターン。
その後、彼はアフガニスタンに帰国し、家族の選んだ花嫁と結婚。そして男の子が生まれたそう。
彼の奥さんはとても幸せだろうなぁ。と心から思います。
もし、彼がムスリムじゃなかったら、もしアフガニスタンに帰らなければ、私の恋愛話は彼でストップしていたと思います。
その後、彼のような人格/性格の人には一人も出会っていません。しっかり心に刻まれた思い出です。
*フラット:日本でいうシェアハウス、でしょうか。自分自身の部屋はあるのですが、バスルームとキッチン、リビングルームなどは他の住人とシェア。(そのシェアをしている人たちを"フラットメイト"と呼びます。)ここニュージーランドでは特に若者に一般的な住居スタイルです。
*テナント:そのフラットを借りている代表者。
*ハラル:ムスリムが宗教上摂取する事のできない材料(アルコールや豚肉など)を利用してない食材。また、ハラルミートは神に祈ってから、家畜が苦しまないように一瞬で屠殺した肉類。
今日の写真:
ムリワイビーチ(Muriwai Beach)カツオドリ(Gannet)の営巣地として有名な場所です。