「傷つきやすいアメリカの大学生たち」グレグ・ルキアノフ+ジョナサン・ハイト(原題「The Codding of the American Mind」)を読み終わりました。
近年(2017年前後の豊富な事例)、米国の主にエリート大学で起こった、自分たちの意にそぐわないスピーカーの講演を物理的に阻止したり、魔女狩りのような言葉狩りで特定の教授の論文撤回や解雇要求までの圧力をかけたりする学生達や、他の教授の公開非難をするようになった教授達などがあらわれてきた背景を考察し(いわゆるキャンセルカルチャー)、最後には解決策を提言しています。
“傷つきやすい”ハートを守るためにはお金がかかる→そのための組織の構築やスタッフの増員→教授よりスタッフの雇用が増える→市民のニーズに応える市役所のような組織へと変貌(官僚化)→諸経費高騰→授業料の高騰、となったのでしょうか。
まさに魔女狩りのような展開で一方を追い詰め、大学側からはお咎めなしの弱腰対応がさらに反対勢力からの過剰なヘイトを呼び入れたUCバークレーでのエピソードなどは衝撃的です。皆さん頭が良いのに何でそうなっちゃうのと。
“自分達は他社の言動に傷つき消えてしまいかねない弱い火のような存在なのだ”という認知の歪みが、キャンパスが多様な視点から自分の意見を形成する場ではなく、他者を完全否定するキャンセルカルチャーの場となったと著者は言います。世界観によって帰結が大きく異なるのですね*最近は少し揺り戻しがあるかもしれません。
主な認知の歪みとして列記されたのは以下の通り(P64~、P381~)
・感情の決めつけ・・・自分の感情を事実とする
・破局化・・・最悪な結果ばかりに目を向ける
★過度な一般化
★★二分法的思考・・・出来事や人々を全部かゼロで考える。善か悪か
・心の読みすぎ
★★レッテル貼り・・・自分や他者に否定的な特性
・否定的フィルター・・・ネガティブ面のみに目を向ける
・よいことの無効化
・非難・・・自分の否定的な感情の原因は他者にある
(注)★は私です。
もちろんSNSが助長した側面についても著者は触れていますが、これはそっくりそのままSNS(特にX)でのヒートアップした教育談義で親が陥ってしまう可能性があると感じました。使用制限されるべきは子だけではなく親も。
かえって視野が狭くなりサイドをとるジャッジメントな感情(SNSの作法は明確にサイドをとることです)が知らないうちに子供たちの不安に繋がっていないでしょうか。著者によると若い世代特に女性のうつ病などのメンタルヘルス問題が急増しているとのこと。それに親を含めた大人が拍車をかけるようなことはしたくないです。不安な気持ちにならないことが難しい様々な情勢はあるとはいえ。。
一般的な情報(新聞雑誌記事・書籍やブログなど文字数が多く説明が尽くされているもの)から自分の考えを構築したりクリティカルシンキングを養うのが建設的で一番良いのかもしれません。賢く使い分けたいですね!