「傷だらけの天使」
-死と俗なる業を描いた底辺の世界-
2019年03月31日 日曜日
ショーケンこと、萩原健一が亡くなった。
彼の死は、「太陽にほえろ」(1972~73)での殉職シーンを思い出す。
夜、街角の暗闇の中、立ションをしているところを、
暴漢に刺されて死ぬシーンである。
また、「傷だらけの天使」(1974~75)の最終回では、弟分の亨が死ぬ。
水谷豊が演じる死んだ亨をドラム缶のフロに入れてやるシーンがある。
何とも言えないシュールなシーンであった。
常に死をイメージするシーンが印象に残っている。
反対に「前略 おふくろ様」(1975~77)という
板前の姿を描いたテレビドラマがある。
冒頭、ショーケンが母親へ綴る手紙の朗読からはじまるドラマであった。
ショーケンが演じる一人の板前さんが成長していく姿を、
人情劇として描いたドラマである。
その後、大麻の所持で逮捕されたりと、何かと世間を騒がす事件で、
ショーケンの消息を知ることになる。
1950年生まれ、68歳で没。
「愛と誠」(1974)での壮絶なスキーシーンを思い出す
西城秀樹は、1955年生まれで、去年、63歳で亡くなる。
1970年代にテレビで活躍した芸能人は、
何かと記憶に残っている。
あの頃に描かれた透明な意識と、
人の俗なる業を描いた物語が記憶に残っている。
さて、世間に抗してハチャメチャなイメージが
萩原健一にはあったけれども、
素顔はまともで世間的なヒトだったという。
彼は社会の秩序からはみだすこともあったが、
自分が世間から外れてしまうというコンプレックスを、
糧に演じていたのも明らかであった。
これが「傷だらけの天使」で演じられた研ぎ澄まされた探偵の姿であり、
現場で撮影に当たっていた人たちの世相を反映した物語だったのだろう。
この頃は、社会の底辺を彷徨っている人々を、描くことが出来た時代でもあった。
この怪しい綾部情報社を主宰するのが女社長の岸田今日子である。
フィンランドの森の妖精、ムーミンの声優として活躍した女優さんである。
また、この探偵社のナンバー2として理知的に亨と修のあいだを取り持ったのが、
辰巳五郎を演じる岸田森だ。
円谷プロ育ちを自認し、怪奇大作戦などの非日常世界を演じた文学座出身の俳優さんであった。
@アトリエまほろ/橋本完