※タイトルは違いますが、またもや以前に書いたやつの焼き増しですみませんタラー




                  『君が怖いもの 1』




暖かい春の光が差し込む学校の中庭で

「ねぇ…って、あれ?」

お弁当を食べながら話しかけると、隣にいたはずの彼の姿が見えなくて

「えっーと」

辺りを見回すと、すぐ傍にある大きな木にもたれかかって目を閉じていた

「寝ちゃったの?」

昨夜もバイトで遅かったって言ってたもんね

うー、どうしよう

「なんだよ?」

静かに目を開けてこっちを向いた表情は、やっぱり少し疲れてるみたいだったから

「ううん、なんでもない」

うっかり相談してしまいそうだった『あること』を飲み込んでしまったわたしに

「これ…」

彼はポケットから取り出した2枚の紙を差し出した

「なあに?」

「バイト先の先輩にもらったんだ、なんかの懸賞で当たったらしいけど興味ないからって。」

そう言って手渡されたのは、映画のペアチケットだったのだけれど

「ホラー映画?」

しかも

「成人指定って書いてあるだろ?そうとう怖い、っていうかグロテスクなんだろうな。」

「それは…ちょっと苦手かも。」

「だよな、やっぱやめとこう」

あっ、でも

「行きたい!」

「は?」

だって、彼と並んで観ることができるんなら『キャー』って抱きついちゃったり出来るかもしれないし

「……」

あっ、読まれちゃってる?

「も、もったいないかなぁって」

ふたりで出かけられる機会なんて、滅多にないから

「…泣いてもしらねぇぞ」

多少のことなら我慢するもん

「だ、大丈夫」

彼と一緒ならきっと怖くなんかない、はず


次の日曜日


バイトを終えた彼と、夕方になってから訪れた映画館で

「怖かったら耳と目を塞いでろ」

「う、うん」

飲み物を買って席に着くなり、そんなやりとりをしたにもかかわらず

いざ本編が始まってみると

「あっ…」

頭を抱えてスクリーンから何度も目を逸らすことになってしまったのは、わたしではなく彼の方だった




※次回に続きます↓