『long road 3』




『それは、おまえがやりたいことだろ?』

呆れたような顔で笑った彼に言われた通り

わたしが結婚に夢や希望を持ち過ぎているのはわかってるけど

あまりにも普段と変わらない様子で新居での生活を始めた彼を見て、余計に気持ちがざわついてしまう

やっぱり

男の人って結婚に対してそんなに思い入れがなかったりするんだろうか?


結婚式まで3日に迫った今夜も


「電気もガスも来てるんだから…そろそろここのキッチンも使えよ。」

うちで作って持って来た食事を新居のテーブルに並べいると、ジムから戻った彼がぼそっとつぶやいた

「えっと、なんだかもったいなくて」

「またそれか…なにをそんなに遠慮してんだよ?自分の家だろ」

わたしの家、なんだろうけど

「新しくてピカピカだから…落ち着かないっていうか、緊張するっていうか」

「緊張しなきゃいけないような豪邸じゃねぇよ」

「そういうことを言ってるんじゃ…」

プロポーズされた日からずっと

綿あめのようにふわふわした、甘い夢の中にいるみたいで

なんだか、触れたら消えてしまいそうなくらい現実感がない毎日だったせいかもしれない

いいかげん、しっかりしなきゃいけないって気持ちばかり焦ってしまう

「もういい、わかった」

「えっ!?」

突然、体が宙に浮いたかと思ったら

「心配するな、ちゃんと思い出させてやるよ。」

「ちょっと待って、あの…」

「現実だってことを、な」

抱きかかえられたまま、寝室に連れて行かれてしまった


なんで、そうなるの?


「ゆ、夕食は?」

おそらくまだ一度も使っていない方のベッドに下ろされ、慌てふためいているわたしを気にも留めずに

「もう少し体を動かしてからにする」

エプロンの紐を解いて取り去り、トレーナーの裾から手を差し込んできた彼は

「やっ、でも…」

「でもじゃねぇよ、いったい何日おあずけ食らってると思ってんだ」

深いため息をつきながら、とっても優しい顔で笑った




※次回に続きます↓