※とりあえず、お誕生日企画第一弾(は?)ただし内容は誕生日とは関係なくて、よくある結婚前夜っぽいお話になる…かも(安定のノープランタラー)特に内容はありませんが暇つぶしに読んでいただけたら嬉しいです照れふたりが結婚した1990年4月の設定になっています💍




                     『long road 1』




「おいっ、呼んでるぞ」

「えっ?」

寝室のクローゼットで荷解きをしていた彼が、ベッドメイクをしていたわたしの腕を軽く引っ張った

「奥さーん、冷蔵庫の位置を確認してもらえますか?」

階下のキッチンから聞こえて来た電気屋さんの呼びかけは、さっきから耳に届いていたのだけれど

「あっ、えっ…奥さんってわたしのこと?」

「ほかに誰がいるんだよ」

そっか、そうだよね

あと1週間ちょっとで、彼と結婚してこの家の主婦になるんだもんね


4月最初の日曜日


彼が高校時代から住んでいたアパートの部屋を引き払い、新居へのお引越しが完了した

    
お式まではまだ日にちがあるから、細かい片付けは明日以降もやることになっているのだけれど

「なんとか終わったな、お疲れ」

「お疲れさま」

ひとまず今夜から生活出来る状態になったところで、わたしは両親と弟の待つ家に帰ることにして

「ご飯、ほんとに作らなくて良かったの?」

送ってくれるという彼と並んで歩きながら、気になっている夕食のことを聞いてみた

「なんか買って帰るから、心配するな」

「うちで食べてかない?」

「もう遅いし、遠慮しとく」

「遠慮なんてしなくていいのに」

「っていうか、わざわざ家に戻らなくても…おまえも新居に泊まれば良かっただろ」

たしかに、明日も朝から行く予定にしてはいるんだけど

「なんだか、もったいなくて」

「はあ?」

えっと、なんて言ったらいいんだろう

「結婚してからのお楽しみにしておきたい…みたいな?」

「なんだよ、それ」

よくわからない、といった風に苦笑いしている彼の気持ちもわかるんだけど

やっぱり、新居で彼と暮らすのは正式に夫婦になってからにしたかったのと

「あの家で家族と過ごすのも、あとちょっとだけだから…」

たまに寂しそうな表情を見せるお父さんと少しでも一緒にいてあげたい、と伝えると

  
「結婚、やめたくなったか?」

真顔でびっくりするようなことを言われ

「やだっ、そんなんじゃないってば!結婚したい…っていうか、してください!」

泣きそうになったわたしを見て、彼は思いきり吹き出した

「わかってるよ、ばーか」

はぁ

この調子で結婚後もからかわれ続けるのかしら

それはそうと

「じゃあ、また明日な」

門の前まで着いたところで、わたしの頬にキスをして新居に戻ろうとした彼に聞いておきたいことがあった

「あ、あの…」

「なんだよ?」

「わたしに注文とかって、ある?」





※次回に続きます↓