※やっぱり日本語のタイトルって難し過ぎるえーんかと言って、英語のタイトルもネタ切れですタラー
ところで真壁くんっていつ、お部屋に電話引いたんですかね?『〜事情』でジムの公衆電話から蘭世にかけてたからアパートにはなかったのかと思いきや『〜悶々』では部屋から電話してたからびっくり!どのタイミングで!?もしかしたら高校在学中とか?わからない…わからないから勝手に想像(妄想)して書きました笑い




                       『call 2』



「いいかげん、泣きやめよ。」

「だって…」

卒業式を終えての帰り道

友達との別れが悲しくて涙が止まらないわたしの隣で、彼が大きなため息をついた


「これじゃあ、俺が泣かせてるみたいだろ。」


明るい春の日差しに照らされた午後の住宅街は人通りも多くて、周りの目を気にする気持ちもわからなくはないけど

「…明日から高校生じゃないんだなぁって思ったら寂しくならない?」

「はあ?むしろ嬉しいだろ、もう2度と勉強しなくていいんだぜ。」

聞き間違いかな?

だって…

「言うほど勉強なんかしてなかったくせに。」

「るっせぇ、馬鹿。」

彼はボクシング部の後輩からもらった花束を自分の分までわたしに押しつけると

「これからバイトだから、またな。」

我が家の門の前に着いたところで背中を向けて歩き出した…と思ったら

「あとで電話する、9時過ぎるかもしれないけど起きとけよ。」

ちょっとだけ振り向いて、そんなことを言って走り去って行った

「えっ!?」

電話って…なに?

彼の真意はよくわからなかったけど

家族と食事をした後で、言われた通りに電話を待っていると 


「あっ…」


本当に午後9時ちょうどに鳴りだした電話の受話器を耳にあてた途端

『泣き止んだか?』

からかうような、それでいて優しい声が聞こえてきて、ほっと胸を撫でおろした

だって、今まで予告をして電話をくれることなんてなかったから…何か悪い話かと思ってドキドキしちゃったんだもん

「そんなにいつまでも泣いてません。それより、どうかしたの?」

『この電話、どこから掛けてるかわかるか?』

へ?

「どこからって…公衆電話だよね?」

アパートのお部屋には電話がないから、いつもジムやバイト先の近くにある公衆電話から掛けて来てたはず…だったけど

『はずれ』

珍しく得意げな口調の彼にピンときた

「もしかして…」

『正解』

「…まだなんにも言ってないでしょ。」

『言わなくてもわかる。』

つまり、お部屋に電話を引いたってことね

「えっ、いつ?っていうか、どうして?」

少なくとも、おととい彼の部屋に行った時には電話なんてなかったのに

『学校に通わなくなるからバイトの時間も増やせるし、プロテストも合格したからな。電話がないとやっぱり不便だろ?』

ああ

わたしって、やっぱり馬鹿だ

この3年間、彼がどれほど苦労して高校に通っていたか知っていたはずなのに

学校に行かなくてよくなれば少しは楽になるから嬉しい、って言う気持ちをわかってあげられてなかった

『…なんの話だよ?勝手に落ち込んでねぇで、さっさと肝心なことを聞けよ。』

えっ?

「肝心なことって…」

なんだろう?

『おまえさぁ…知りたくないのかよ、こっちの電話番号。』

あっ!

そっか、そうだよね

「し、知りたい!教えて。」

『了解』

慌てて電話台にあったメモ帳に、教えてもらった番号を書いて復唱したあとで

「えっと、こっちから掛けてもいいんだよね?」

念の為、確認したわたしに彼は心底呆れたような口調でつぶやいた

『あたりまえだろ、なんのための電話だよ。」

「用事がなくても?」

『そっ…』

心を読む能力がなくったって、彼が照れているのがハッキリわかった

「ありがとう、おやすみなさい。」

わたしまでなんだか恥ずかしくなって、電話を切ろうとした瞬間

『…してる』

消え入りそうなくらい小さな声が受話器の向こうから聞こえた気がして

「えっ?」

耳を澄ませたわたしに彼が伝えてくれた言葉に、再び涙が溢れ落ちた


『卒業出来たのはおまえのおかげだ…感謝してる』


そっと切られた電話の余韻に浸りながら

これからも彼のすぐ傍にいられる幸せに、わたしもすごく感謝していた




fin