『chocolate 2』





数日ぶりに彼女が会いに来てくれたのは、もちろん嬉しかったのだが

「おじゃまします。」

今夜は部屋の中に『見せたくない物』あることを思い出し

「夕飯は食べたのか?なんだったら外に食べに行こうか。」

さりげなく『見せたくない物』が入っている紙袋を隅に追いやりながら、この部屋から出るための提案をすると

「えっと、簡単な物で良ければわたしが作るけど…冷蔵庫の中に何かある?」

「いや、おまえも今日は疲れてんだろ。」

「ううん、全然。あっ、卵とネギがあるからオムレツとスープくらいなら出来るかも。」

彼女は残り物の材料であっという間に美味そうな食事を作ってしまった

「ほらっ、冷めないうちに食べようよ。」

食事をしながら楽しそうにバイトの話をする彼女に気を取られ、すっかり油断したところで

「ねぇ、あれってもしかしてチョコレート?」

いきなり直球が飛んで来た

「…ああ。」

今日は朝の1時限だけホームルームに出なければならず、久しぶりに登校してみると

机の中やシューズロッカーにいくつもチョコレートと思しき包みが入れられていて、バレンタインデーだということに気がついた

校内で捨てるわけにもいかずに持ち帰ってしまったが、彼女はバイトがあるし来ないだろうと踏んで部屋に放置してしまったのはさすがにまずかったか

「すごーい、たくさんもらったんだね。」

こっちの不安をよそに、いつの間にか紙袋をのぞき込んでいた彼女はどこか楽しそうで

「俺は食べないから、おまえが持って帰れよ。」

少しほっとしてそう言うと、今度は逆に怒ったような表情になり

「ダメだよ、わたしがもらったわけじゃないし…チョコレートは日持ちするから、ちょっとずつ食べたら?」

「だから、食べないって言ってるだろ。」

べつの意味でめんどくさい展開になってきた時

「あっ…れ?」

彼女は突然、驚いた顔をして固まってしまった






※次回に続きます↓