※今回は恒例の愛良ちゃん目線のお話になります。


                    『cake 4』





クリスマスイブの午後

「鍋焼きうどんって、何が入ってたっけ?」

「ほうれん草とネギと椎茸、あとは海老とかとり肉ってとこだろ」
 
「そっか」

おとうさんが、意外と使えることに気がついた

「足りない材料もあるし、ひとまず買い物に行って来るからおまえは掃除でもしてろ」

「はーい」

昨夜から熱があって寝込んでいるおかあさんに、ふたりで食事を作ってあげようと張り切ってみたものの

料理なんてほとんどしたことのないあたしは、あんまり役に立ちそうにない

それにしてもせっかくのクリスマスに風邪を引くなんて、おかあさん可哀想…って

「あっ!」

「どうした?」

すっかり忘れてだけど、クリスマスと言えば

「ケーキ、どうしよう…」

「は?」

「だって、クリスマスケーキはいつもおかあさんが作ってくれるでしょう?」

冷蔵庫の中に生クリームや苺があるのを見ると、今年もそのつもりで準備していたはずだもん

「あの様子じゃ絶対に無理だからあきらめろ」

それは…わかってるけど

「ねぇ、ケーキもあたしたちで作っちゃわない?」

冗談半分でおとうさんの顔を覗き込むと

「作れるわけないだろ」

眉間にシワを寄せて即答されてしまった

「えー、じゃあどうするの?」

「買い物ついでにケーキも買って来てやるよ」

「わーい!ありがとう、おとうさん」

やっぱりケーキがないと、クリスマスって感じがしないもんね

そんなこんなで

買い出しから戻ったおとうさんの手で、無事に完成した鍋焼きうどんは

「すごく美味しかった。ありがとう、おかげでだいぶ良くなったみたい」

食欲がない、と言っていたおかあさんも完食するくらい上手に出来てめでたしめでたし

と、思ってたら

「ちょっ、何してんの?」

おかあさんがふらつきながら、キッチンに向かおうとしたので慌てて引き留める

だって今は、ちょっとまずい

「だめだよ、まだ寝てなきゃ」

「でも、ケーキの材料が無駄になっちゃうから」
 
まさか、今からクリスマスケーキを作るつもり!?

「心配しなくて大丈夫だよ、おかあさん」

「どういうこと?」

「それは、つまり…」

その時

「大丈夫かどうかは、食べてみないとわからねぇけどな」

「えっ?」

生クリームと苺をトッピングしたホットケーキを手に、キッチンからおとうさんが現れた

「さすがにクリスマスケーキは無理だったが、ホットケーキならいけそうだったから」

「あなたが…作ったの?」

「他に誰がやるんだよ」
 
実は

買い物帰りに洋菓子店に寄ったおとうさんは、あまりの行列にクリスマスケーキを買うのをあきらめ

「ホットケーキくらいなら、うちにある材料で作れるんじゃないかって…」

家にあったお菓子のレシピ本片手に頑張っていた

「あ、ありがとう」

びっくりしているおかあさんと一緒に、形はちょっと悪いけどお世辞抜きで美味しいホットケーキを食べているうちに

「あれっ?」

いつの間にか、おとうさんがリビングのソファで眠っていることに気がついた

「ゆうべ、一晩中看病してくれてたから…ほとんど寝てなかったみたい」
 
そう言って、おとうさんにブランケットをかけてあげたおかあさんの表情は

まるでサンタクロースからプレゼントをもらった子供のように、とっても嬉しそうだった



fin


Merry Xmasキラキラ   にあ