※今回は再び番外編気づき愛良ちゃん(中学生設定)目線のお話になります。




                    『cake 2』



「おかあさん、遅いね。」

日曜日の夕方

PTAの集まりに出かけているおかあさんが夕飯時になっても帰って来なくて

「ねえ、何かあったのかな?」

さっきからずっーと、置物のようにソファに座ってテレビの画面を見続けている(文字通り画面を見ているだけで内容はたぶん頭に入っていないはず)おとうさんは

「まだ6時を過ぎたばかりだろう。お母さんは子供じゃないんだ、心配しなくてもじきに帰って来るさ。」

あくまで平静を装ってそう言ったけれど

横目で時計をちらちら見てるの、ちゃんと分かってるんだから

「…子供じゃないから心配だと思うんだけど。」
 
「どういう意味だ?」

「おとうさんは知らないかもしれないけど、おかあさんって意外とモテるんだから。」

そう

あたしが物心ついた時からずっと

クラスメートのお父さんや担任の男の先生、いつも買い物に行くお店の店員さんetc
 
みーんな、おかあさんのファンになっちゃうんだから

「知ってるよ、あいつは昔から良くモテた。」

「えっ?」

それって

「じゃ、じゃあ恋のライバルなんかもいっぱいいたの?」

「それは…」

「いっちばん手強かったのはどんな人?」

「えっ?」

たじろいでいるおとうさんの袖を引っ張った瞬間

「ごめんなさい、遅くなって。あらぁ何だか楽しそうね。」

「おかあさん!お帰りなさい…って何それ?」

リビングの入り口で微笑んでいるおかあさんは、大きな白い箱を抱えていて

「もしかしてケーキ?なんで?」

「なんかね、ケーキ屋さんの前を通りかかったら急に食べたくなっちゃて。」

だからってなんでホールケーキ???

「たしか、誰かのお誕生日だったような気がしたんだけど。」

11月27日が???

「家族に今日が誕生日の人なんていないよ。」

「そうよねぇ…まぁ、いいわ。お夕飯温めるだけだからちょっと待っててね。」

バタバタとキッチンに向かうおかあさんの背中を複雑な表情でおとうさんが見つめている

もしかして、おかあさんの元彼の誕生日だったりして

おとうさんが咳払いをしてあたしを軽く睨んだところを見ると当たらずとも遠からず…なわけはないよね

だっておかあさんから初恋の人はおとうさんだって耳にタコが出来るくらい聞かされたもん


夕食後


美味しそうなホールケーキを切り分けながら、おかあさんは幸せそうに笑って言った

「良く考えたら毎日が世界中の誰かのお誕生日なのよね。」

「まぁ、そう…だな。」

苦虫を噛みつぶしたみたいなおとうさんの表情に、おかあさんは全然気がついていなかった



fin




※本日11月27日はカルロ様と偶然にもうちの娘のお誕生日でしたバースデーケーキ