『haunted house 1』
木々の葉がすっかり色づいた中庭で
「ずいぶん本格的なんだな」
昼飯もそこそこに、明後日に迫った文化祭の準備に戻ろうとする彼女に声を掛けると
「ど、どういう意味?」
聞き返してきた表情に、やや疲れの色が見えることが気になったものの
「本物のモンスターがいるお化け屋敷なんてなかなかないだろ」
可愛い恋人をつい、からかいたくなるのは俺の悪いクセだ
「言うと思った…けど、わたしはお化けじゃなくてヴァンパイアだもん」
「タマネギと数学が苦手なヴァンパイア、な」
「失礼ね。そっちのクラスは?喫茶店をするんでしょう?」
「らしいな」
文化祭なんて興味もないし面倒くさくて参加する気にならないのだが、今回は
「ウェイターやれって言われてんだ、めんどくせぇ」
「え〜、いいじゃない。わたしも時間見つけて行くから頑張って」
「来なくていい」
「ぜっーたい、行く!」
そんなやりとりをした後の別れ際
「じゃあね」
肩の辺りに軽く寄せられた艶やかな黒髪から
「ああ、またな」
微かにタバコの匂いがしたように感じたのは気のせい、だろうか
やんちゃなヤツもそれなりにいた地元の中学時代ならいざ知らず、カトリックのお嬢様学校で喫煙している生徒など見たことも聞いたこともなかったし、教職員もそのほとんどが
「シスターだし…な」
なにより、彼女自身がそんなものを口にする可能性はゼロよりも低い
「やっぱり気のせいか」
それにしても
文化祭の準備でここのところ毎日帰りが遅いというのに
『わたしの分を作るついでだから』
いつものように弁当を持って来てくれたお節介で優しいモンスターに、俺は
「甘え過ぎ、だな」
そう思わずにはいられなかった
continue(次回に続きます)↓
※昨年書いて気に入らなくて、しれっと消してしまった『文化祭』の話と『お化け屋敷』の話を足してリメイクしちゃいました
後半、私の話には珍しい原作のキャラがゲスト出演(?)しちゃいます。