『propose〜after story〜1』





「結婚式…してくれるの?」


死んじゃいそうなくらい幸せなプロポーズをされた誕生日から数日後

仕事帰りに訪れた彼の部屋で夕食を食べていると、おのずと結婚の話となり

「するに決まってるだろう。一生に一回なんだし、親父さんたちに花嫁姿を見せてやりたいだろ?」

照れ屋な彼のことだから、結婚式や披露宴なんて嫌がるんじゃないかと予想していたのに

「う、うん。」

意外と積極的でちょっと驚いちゃった

しかも

一生に一回、なんていうロマンチックな言葉が出てきたことにジーンとしていると

「…何度もするつもりなのかよ?」

眉間にシワを寄せた彼におでこを指で弾かれてしまった

「えええっ!?まさか、違うわよ。」

結婚なんて、彼とじゃなきゃ絶対にしたくないもん

「冗談は抜きにして新居も探さなきゃいけないし、式は早くても来年の春くらいだな。」

「し、新居?」

わたしは別にここで一緒に暮らしたって構わないんだけど

「馬鹿なこと言うな。こんな狭いとこで暮らせる訳ねぇだろう、そのうち家族だって増えるかもしれないし。」

か、家族が増えるって

「それって、つまり赤ちゃ…」

真っ赤になってうつむいてしまったわたしに

「いちいち変な想像してんじゃねぇよ、話が先に進まないだろ。」

彼は呆れたように大きなため息をついて天を仰いだ





「式は、来年でいいよな?」

死ぬほど恥ずかしい思いをしたプロポーズから数日が経ち

あの日以来、初めて俺の部屋に来た彼女と話すことと言えば当然

「とりあえず、だいたいの時期だけでも決めとかねぇとな。」

結婚に向けての具体的なスケジュールについてだと思った俺が馬鹿だった

「えっ!?」

未だにプロポーズの興奮冷めやらずといった様子の彼女は、俺の言葉に大げさなくらい照れまくるばかりで一向に話が進まず

「もういい、今度の試合が終わってからゆっくり考えよう。」

諦めて、別の話を切り出した

「で、今日は泊まっていくのか?」

「あっ、うん。明日は仕事が休みだし、お邪魔じゃなければ…」

さっきまでの幸せそうな笑顔は消え失せ、急に緊張した固い表情を見せた彼女に苦笑いするしかない

この後に及んで俺が拒否するとでも思っているのだろうか

「雨が降ってきたみたいだし、送ってくのも面倒だからな。」

軽く頬をつねりながら冗談まじりにつぶやくと

「もう…」

恥ずかしそうに胸の中に抱きついてきた柔らかい感触に我慢できず、畳の上に押し倒しそうとした俺を

「待って、片付けてお風呂に入ってから…にしよう?」

慌てて両手で押し留めた彼女の表情があまりにも可愛いくて

「するって…なにをだよ?」

からかわずにはいられなかった

 


continue(次回に続きます)↓


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