『propose 11(プロポーズ)』
               



翌朝、目を覚ますと


「えっ?」

彼の姿がどこにもなくて

昨日の出来事は夢だったんじゃないかと不安になってしまったけれど

「あっ…」

左手の薬指にキラリと光る指輪を見つけ

「やっぱり、夢じゃない…よね。」

ほっとして、とりあえず着替えようとパジャマを脱いだら

「!」

今度は胸元に、深紅の花びらのようなあざがあるのが目に入ってドキリとした

その時

玄関のドアが開く音がして

「起きてたのか。」

買い物袋を手にした彼が戻って来た

「う、うん。どこに行ってたの?」

「コンビニでパンと牛乳買って来た。おまえを泊めるなんて思ってなかったから、朝飯になりそうなものがあんまりなくて。」

「朝ご飯なんてなんでも良かったのに…何か作ろうか?」

立ち上がろうとしたわたしから何故か目線をそらした彼は

「いいよ、俺がやるから。そんなことより…」

口元を手で押さえて真っ赤になっている

「さっさと服を着ろ、朝っぱらから襲われたいなら話は別だが。」

「えっ!」

そうだった

着替えようとしてパジャマを脱いで下着姿のままだった

「ご、ごめんなさい。」

恥ずかし過ぎる

「べつに…こっちこそごめん。」

「なにが?」

「そんなに跡がつくなんて思わなかったから。」

「あっ…」

キスマーク、やっぱり見えてたよね

「消せないこともねぇけど。」

そっか

魔力で傷を治せるんだから、こういうのも消せちゃうのか

「どうする?」

そんなの決まってる

「消さないで。」

「…言うと思った。」

「えっ?」

「いいから、着替えて顔洗ってこい。」

なんだか

たった一晩で、ものすごく彼との距離が近くなったように感じるのは気のせい…じゃないよね


それから、ふたりで朝食の準備をして

「ほらっ…」

グラスに注いだミルクをわたしに手渡してくれながら

「離すなよ」

さりげなくつぶやいた彼の表情を


わたしはきっと


一生忘れないだろう





fin

※いつものことですが、私の超個人的自己満足にお付き合いいただき本当にありがとうございました照れ物足りないって思われた方気づき後日談もあったりします↓


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