『propose 3(推理)』
                  




合宿から戻った彼から驚くような電話がかかって来たのは、親友と会った数日後のことだった


「わたしの誕生日を…お祝いしてくれるの?」

しかも

わたしのリクエストに応えると言ってくれたから、間髪入れずに

「手料理が食べたい。」

彼の部屋で彼が作ったご飯が食べたい、そう答えると

『はぁ?』

受話器の向こう側から、かなり戸惑っている様子の声が聞こえて来た

『俺に気を遣わなくてもいいから』

テーマパークでもレストランでも行きたいところに連れて行く、彼はそう言ってくれたけど

決して遠慮している、というわけではなくて

このところ忙しくてすれ違ってばかりだったから、たまにはふたりきりでゆっくり過ごしたいというのは紛れも無い本心で

そんなわたしの提案に、しぶしぶOKしてくれた彼との電話を切った瞬間

「あっ…」

この前、親友に言われたことを思いだした

『こっちから泊まるって言った方がいいんじゃない』

カレンダーを確認すると、誕生日の翌日はたまたまスーパーのバイトは休みになっていて

「これって、もしかして…」

チャンス、だったりする?

内緒で泊まる準備をしてアパートに行き、食事をした後いつもみたいに『送ってく』って言われたら

「帰らない、って言ってみようか。」


でも


その後は?

彼はいったい何て言うだろう?

変なところで真面目(?)な彼が気にしそうなことは、たぶん



「外泊?」

「う、うん。わたしの誕生日なんだけど、彼のところに泊まってもいい?」

夕食後、食器を洗っているお母さんを手伝いながらそれとなく彼のアパートに泊まってもいいか聞いてみると

「いいもなにも、もう子供じゃないんだから。

あっさりOKが出てしまった

「でも、お父さんは…なんて言うかな?」

「お父さんだって反対なんかしないわよ。せっかくのお誕生日なんだし楽しんでらっしゃい。」

だよね

彼と出会ってから7年

いろんなことがあったけど、今は家族みんながわたしたちのことを応援してくれているわけだし

うちの両親の彼に対する信頼は絶大だもの

「ありがとう、お母さん。」

これで、彼が首を縦に振るための障害はクリアした…はず

そもそも彼がわたしにキス以上のことをしてくれない理由ってなんなんだろう

とても大事に思ってくれている…だけなら嬉しいんだけど

いわゆる大人の女としての魅力をわたしにまったく感じない、とかだったらどうしよう

万が一

これで『帰れ』と言われてしまったら

一生立ち直れそうにない




continue(次回に続きます)↓


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