※今回は『父の日』にちなんだお話です。
愛良ちゃんが中学3年生の設定でカタカナ表記の『カレ』は『新庄さん』のことになります。
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『request 1』
「ただいま。」
日曜日の深夜
泥酔、とまでは行かないが久しぶりに気持ち良くなって帰宅すると
「おかえりなさい。」
リビングでTVを見ていた彼女が立ち上がり、にっこり笑って近寄って来た
「起きてたのか、先に寝てれば良かったのに。」
「遅いから心配になっちゃって。お父さんに引き留められてたの?」
「そういうわけじゃねぇけど、ふたりきりで飲むのは久しぶりだったから…つい2軒目まで行っちまって。」
今日はいわゆる父の日というやつで
数日前、彼女の父親に何か欲しい物があるかそれとなく聞いたところ
「何もいらないから、たまにはふたりで飲みに行かないか?編集者にいいお店を教えてもらってね、君もきっと気に入ると思うよ。」
そうリクエストされたため日没を待って街へと繰り出し、落ち着いた雰囲気のバーをハシゴして帰って来たまでは良かったのだが
「あいつらは、もう寝たのか?」
ふと、自分も2人の子の父親だということを思い出した
「あっ、うん。明日は月曜日だから」
「そうか。」
小さい頃は似顔絵やちょっとしたプレゼントを欠かさずにくれた子供たちも思春期になればそっけないもんだ
ソファの背にもたれ、酔いが回った頭でぼんやりそんなことを考えていると
「あ、でも…あの子たちからあなたにって父の日のプレゼントを預かってるの。」
そう言いながらキッチンに姿を消した彼女が、両手に抱えきれないほどの大きな花束を持って現れ言葉を失うほど驚いた
「!?」
「き、綺麗でしょう?珍しいわよね、アイスブルーの薔薇なんて。」
「はぁ?」
綺麗とか綺麗じゃないとかいう前に
「なんなんだよ、それ?」
母の日と勘違いしてんじゃねーのか?
そう言いかけて、あることに気がついた
「あの子たちってのは、まさか。」
「その、まさかなの。」
息子と娘から、ではなく
娘と花屋でアルバイトをしている娘のボーイフレンドからの贈り物、ということか
「父の日には黄色い薔薇を贈るのが一般的らしいんだけど、あなたに黄色は似合わないからって…あの子のリクエストを聞きながらカレが特別に作ってくれたんですって。」
「……」
「ぱっと見ちょっと怖い感じがするけど繊細で優しいわよね、カレ。」
だから?
中学生の娘のボーイフレンドが作った花束をもらって喜ぶ父親がこの世にいるのか?と口に出さなかっただけでも褒めて欲しいくらいだ
「…頭が痛くなってきたから寝る、それはおまえに任せるから適当に生けといてくれ。」
完全に不貞腐れている俺の気持ちに気づいているのかいないのか
「だ、大丈夫?お薬持って来るね。」
再びキッチンの方へと向かおうとする彼女にため息をつきながら、ポケットの中の小さな箱を握りしめた
continue(次回に続きます)↓