『tempest 4』
夢を見ていた
暴風雨が吹き荒れる深い森で道に迷って泣いていると
危険も顧みずに嵐の中に飛び込んで来た彼に、しっかりと抱きしめられている夢を
「大丈夫か?」
彼の声が聞こえた気がして目を覚ますと
「あっ…れ?」
自分の部屋のベッドの上にいて、傍らには彼が立っていた
「ったく、なんであんな時間に学校に来たんだよ?」
そうだ
いつもよりかなり早い時間に登校したら、わたしの教室で傷だらけになっている彼がいて
「そ、そっちこそ大丈夫なの?ひどい怪我してたんじゃ…」
「あぁ、かすり傷だから平気だ」
たしかに、見えている範囲では怪我をしているようには見えないけど
「いったい何があったの?昨日の釘と関係あるの?」
「関係ねぇよ、ただ…」
「ただ?」
身を乗り出すようにして聞き返したわたしに彼は優しく微笑んで
「野暮用があって早めに登校したら窓ガラスが割れた音がして…うっかり見に行ったら風に舞った破片であちこち切っちまっただけだ」
そう言うと、わたしの頭をポンと叩いた
でも
だとしたら、どうして今わたしの部屋にいるの?
「学校は台風で休校だとさ。おまえは俺の血を見て貧血でも起こしたんじゃねぇの?なかなか目を覚まさねぇからテレポートして連れて帰ったんだ」
「…ほんとに?」
どこか腑に落ちない話に疑いを持っていることはお見通しだったみたいで
「ほんとだよ、他に何があるってんだ」
彼は自分の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜるようにしてため息をつくと
「おまえが心配するようなことは何もねぇから安心して寝てろ。倒れたのは寝不足のせいもあったんだろう?」
夢の中と同じように、わたしを強く抱きしめてくれた
continue(次回に続きます)↓