『share 6』




わたしが余計な一言を言っていつも困らせてしまう恋人は

思いを言葉にするのが苦手な人だから、時にすれ違うこともあるけれど

こんなふうに唇が触れ合った瞬間に、お互いの気持ちが溶け合うように感じられて

ふたりの体温が一緒になる心地良さに酔いしれて、いつまでも深い口づけを止められなかった


ようやく彼の胸の中で呼吸が落ち着いたころ


「やっぱりちゃんとお祝いしたい…」

ダメもとでお願いしたら、彼は少しためらいながらもわたしの部屋まで来てくれた

「お誕生日おめでとう。」

早起きして焼いて置いたチーズケーキを切り分けて、オレンジジュースで乾杯すると

「わざわざケーキなんか作らなくていいって言っただろ。」

そう言いながらも、美味しそうに食べてくれたから

「もっと食べる?」

空になったお皿を受け取ろうとして伸ばした手はなぜか、彼の大きな手に握られて

「どっちを?」
 
かすれた声で優しく聞かれた





                〜おまけ〜


「それで、結局プレゼントは何にしたの?」

彼のお誕生日から3日後

再び親友と喫茶店でお茶をしながらあの日の報告すると

「…冗談でしょ?」

いろいろ端折って(話せないこともあるし)

『おまえがいい』はわたしの似顔絵だったことを話すと呆れたような顔をされちゃったけど

「いいの、だって彼はわたしの絵が欲しかったってことだもん。」

受けった似顔絵を嬉しそうに見ていた彼の横顔を思い出し、ひとりでニヤニヤしているわたしに親友は

「…何に使うんだろうね、それ。」

苦笑いしながらつぶやくと、手付かずのスフレをスプーンで掬ってわたしの口に押し込んだ

「?」

「誰かさんのせいでお腹いっぱい、責任取って一緒に食べて。」



fin



※タイトル泣素直に『birthday』とかにしとけば良かった魂


※結婚直後のお誕生日話(短いお話です)追加で書いてしまいました↓