※このお話にはオリキャラが登場しますのでご理解の上でお読みください。
『distance 3』
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「お疲れ様でした」
期間限定で始めた引越しバイトの2日目
朝から3件続いた荷下ろしの作業が終わり、営業所を後にするころにはすっかり夜も更けていた
一刻も早くアパートに帰り、疲れ切った体を休めたいところだったが
「面倒くせぇな」
今朝、1件目の引越しで行った単身者用マンション
そこで降ろし忘れた小さな段ボール箱があったとかで、帰り道に近くを通る俺に届けて欲しいと頼まれてしまい
しかたなく寄った部屋のインターホンを押し、出て来た女性客に荷物を渡そうとしたのだが
「ああ、それぇ…別れた彼氏が置いてったガラクタだから捨ててくれて良かったのにぃ」
見るからに泥酔している様子の女にそう言われ頭を抱えた
「そんなこと言われても困ります、とりあえずお渡ししておきます」
玄関先に段ボール箱を置き、部屋から出ようとした瞬間
「ねぇ、お兄さん…中に入って一緒に飲まない?」
足元がふらついたのか、俺の背中に寄りかかってきた女にしがみつかれてしまった
「俺、高校生なんです。悪いけど離してもらえませんか?」
「そんなに分かりやすい嘘つかなくったっていいじゃな〜い」
なんとか引き剥がして部屋の中に座らせた女は不満そうに話し続ける
「ほんと男って嘘ばっかり…私が転勤したら遠距離恋愛は無理だから別れよう、ってなんなのよ。絶対ほかに女が出来たに決まってるんだから」
なるほど
引越し当日の夜に、ひとりで泥酔するまで飲んでる理由はそれか
なんにせよ、俺には関係ないし興味もない
「もう帰りますけど、あまり飲み過ぎない方がいいですよ」
「つまんないの」
「それから…ほんとに高校生なんです、俺」
マンションのエントランスを出て星のない夜空を見上げると、どっと疲労感に襲われ
彼女と最後に会った日からまだ3日しか経っていないというのに、早くもあの優しい笑顔が恋しくなっている自分に呆れてしまう
そもそも
今回は何のバイトをするのか、ということは彼女にはあえて教えていなかったのだが
体力勝負の重労働を長時間やると知ればまた余計な心配をさせてしまうと思い、仕事の内容は適当ににごしたのだがあまり深くは追及されずほっとした
同じように、2週間近く会えないかもしれないと告げた時に向けられた優しい笑顔にも感じたのは
信頼されている
すべてはその一言に尽きるだろう
その信頼に報いるためにも頑張らなければ
そんなことを考えながら歩き始めた時
微かに彼女の気配を感じたのは気のせい、なんだろうか
continue(次回に続きます)↓
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