※このお話にはオリキャラが登場しますのでご理解の上でお読みください。
『distance 2』
濃い霧に覆われた森を抜けると、そのお屋敷は突然姿を現した
「ここ、だよね?」
我が家に魔界のヴァンパイア村からの使者がやって来たのは数日前のことだった
「お父さんの生家でやるパーティ!?」
書斎に呼ばれて渡された一通の招待状には、ヴァンパイア族の若者の親睦を深めるためのパーティにわたしも是非参加して欲しいと書かれていて
「でも、わたしは純粋な吸血鬼じゃなくて狼族との混血だし…」
おまけに人間界生まれの人間界育ちだから、ヴァンパイア村のことはよくわからない
「実は、お父さんと仲の良かった従兄弟の子供たちが人間界で暮らしているおまえの話を聞きたがってるそうなんだよ。」
「そう…なの?」
あんまり乗り気ではなかったけど、ちょうど彼からしばらく会えない、と告げられた直後のお誘いだったこともあり
「暇つぶしに来ちゃいました…なんて、言わない方がいいよね?」
慣れないドレス姿で緊張しながら古めかしい門の中に入ると
「いらっしゃい、君が出来損ないのヴァンパイアかい?」
大きな木の影から声をかけてきたのは
黒いマントを纏ったタキシード姿の背の高い男性で
漆黒の髪に真っ白な肌の色はまさに吸血鬼、という感じがした
お父さんの若いころにちょっと似てる?
「ええっと…」
たしかに、わたしはいろんな意味で出来損ないではあるからべつにそれは構わないんだけど
「はじめまして。君のお父さんの従兄弟の息子…オリバーだ、よろしく。」
差し出された手をどうしたらいいのか迷っていると
「みんなお待ちかねだ、中へどうぞ。」
さっきの失礼な言葉はどこへやら、うやうやしくわたしの指先を手のひらに乗せるようにしてエスコートしてくれたのだけれど
お屋敷のドアを開け、わたしを先に通してくれながらチラッとこっちを見たオリバーが
「なんだ、普通の吸血鬼と変わらないんだね。」
ほっとしたような表情に見えたのは、気のせいなのかな?
continue(次回に続きます)↓