※今回はバレンタインデーのお話です。




                     『strawberry 1』




「明日はいらねぇからな、アレ。」

耳元でそう囁かれ、ぎゅっと瞑っていた瞳を開けた

はいいっ?

ちょっと、待って

アレ…が何なのかは知らないけれど、そんなことよりもなんで校舎でいきなり

「いっ、いったいどうしたの?」

人の気配が無いとは言え、階段の踊り場なんかで

「どーもしねえよ、とにかくいらねぇからな…チョコレートは。」

あ、ああ

チョコ…ってバレンタインの、ね

いやいや、そうじゃなくって

なんで朝からこんな場所で

こんなにきつく抱きしめられてキスされてるんだろう、わたし?


2月もすでに半ばに近づき


ほぼ女子高のような学校の教室ではバレンタインの話題を耳にすることが増えてきて

わたしも彼に何かあげたいけれど、甘いものはあまり食べてくれないかなぁ…と少し悩んでいたのはたしかだけど

登校した途端に教室の前でわたしを待ち構えていた彼に手を引かれ、強引に連れて行かれた屋上に上がる階段の踊り場で

胸に抱えていた鞄ごと抱きすくめられたかと思ったらいきなりのキス

こんなこと、今まで一度も無かったし…なんなら彼が良く言う『ガラじゃねぇ』って言葉がぴったりの謎の行動にパニックに陥っていたところに

『チョコレートはいらない』って…いったい何?なんなの?

「何かあったの?それともわたしが何か気に触るようなことした?」

もしくは言った?

「べつに、そんなんじゃねぇよ。とにかくチョコはいらないから…わかったな?」 

思い詰めたような表情で再びそう念を押されたら

さすがに「うん」って頷くより仕方なかった




continue(次回に続きます)↓
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