『cherish 6』





「ここって…」


目的地に着いたころには既に日が傾き始めていたが却ってそれが良かったのかもしれない


家族連れが帰路に着いた遊園地は空いていて、どのアトラクションも待たずに乗れそうだった


「何か乗りたい物はあるか?」


「えっと…」


「なければ時間もないし…行くぞ。」


「ど、どこに?」


戸惑っている彼女の手を引き乗り込んだのは。


「観覧車…に乗りたかったの?」


園内の一番奥にある大きな観覧車


「覚えてないのか?おまえが乗りたいって言ったんだぞ。」


「わたしが?あっ!」


「思い出したか?」


夏休みが終わるころ、この遊園地に新しく出来た巨大観覧車の話を友達に聞いたらしく乗ってみたいと言ったのを思い出したらしい


「良く覚えてたね、わたしも忘れてたのに。」


ゆっくりと上昇して行くゴンドラの外は夕焼けで眩しいくらいのオレンジ色に染まっている


まるでおとぎ話の世界に迷い込んだようなこの場所なら、少しは素直に言えるだろうか


「覚えてるさ…おまえと話したことは全部。」


「!!」


彼女の瞳からこぼれ落ちた大粒の涙は夕日を浴びてまるで宝石のように美しかった




continue(次回に続きます)↓