『cherish 3』





「やっぱり、ない…」


わたしは今週何十回目か分からない大きなため息をついて自分のベッドに倒れ込んだ


「いったいどこに置いたんだろう。」


ここ数日、部屋の中身をすべてひっくり返す勢いでわたしが捜しているもの


それは


以前、彼からもらった大切な『星のペンダント』


彼が人間だった最後の日に、初めてプレゼントしてくれた大事な大事な宝物


一度チェーンが切れてしまったこともあり(彼が直してくれたけど)あまり身につけないようして、いつも大切に宝石箱にしまっていたはずなのに見当たらなくて


時々小さな手縫いの巾着袋に入れてお守りがわりに持って歩くこともあったから部屋にある鞄や洋服のポケット、タンスや机の引きだしの中を隅から隅まで捜したのに見つからず


学校にいる間もペンダントのことが頭から離れず今日のお昼休みも上の空だったとは言え、せっかく彼がデートに誘ってくれたのに聞き逃してしまうなんて


もしかして、気づかれちゃったかな?


うーん


わたしをデートに誘うことに一生懸命だったから気づいていなかったかもしれない


そう、あんな風に照れてる彼を見るのは久しぶりだった


ここのところ試合やバイトで忙しくて学校以外でゆっくり会う暇も無かったし


ううん、試合がひとつ終わっただけで相変わらず彼の日常は忙しいことに変わりはなくて


今回のデート当日も明け方までバイトをした後だと言われ心配のあまり一瞬暗い表情をしてしまった


でも


ここはやっぱり気持ちを切り替えて彼と過ごせる時間を楽しまないと


ペンダントのこともひとまず置いておいて、とにかくデートプランを考えよう


えーっと、デートプラン?行きたいところ?


これはこれで結構難しい宿題になってしまった。


そうして迎えたデート当日


久しぶりに外で会うから洋服選びに気合いが入って時間がかかり、彼を玄関先で待たせることになって焦ってしまった


そんなわたしを彼がしばらくじっと見つめていたのが何だか気恥ずかしくて


しかも少し大きめのバックを抱えていることを指摘されてドキッとした


行きたいところを映画館と伝えるとかなり驚いた顔をされたのも予想外で


どうか、わたしのデートプランが事前に読まれませんように


心の中で祈っていると、彼がポケットから何か小さな物を取り出してわたしに差し出した


「これ、おまえのじゃないのか?」


「えっ!!」


それは紛れもなくわたしが捜していたペンダントが入った布の袋で


「どうして?どこにあったの?」


「どこって…俺のジャージのポケットに入ってるのを今朝ジムで気がついたんだ。先週の試合の時おまえにジャージの上着持っててもらっただろう、あの時入れたんじゃねーの?」


そっか


試合を見に行った時にお守りがわりにずっと握りしめていたんだけど、途中であまりにも力が入り過ぎてまた壊してしまいそうで…自分のバックかポケットに入れたつもりだったのが羽織っていた彼のジャージの上着に入れちゃってたんだ


「良かっ…た。ほんとに良かった。」


心の底からほっとして両手で顔を覆って泣き出してしまったわたしを、彼はいよいよ困ったような表情で見つめて立ち尽くしていた





continue(次回に続きます)↓



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