『remember 5』
生まれて来てから12歳の今まで
学校にも通わずにほとんどの時間を家の敷地内で過ごしてきたから
外へ出るのも久しぶりだし、ましてや夏祭りなんて初めての経験で
お母さんに浴衣を着せてもらい、お化粧までされた自分の姿を鏡で見ただけでも何だかとっても嬉しくて
ただ
今、わたしと手を繋いで隣を歩いている人…家族の話ではわたしの恋人だという彼のことを全く覚えていないのが何だか申し訳なくて
12歳以降の記憶を失ってからの数日間にみんなが教えてくれた彼についての情報をおさらいすると
彼は複雑な事情があって人間界で人間として育った魔界の王子様
わたしが初めて通った中学校で同じクラスの隣の席になりわたしが一目惚れをして
わたしたちが15歳のクリスマスに彼は魔界人として生まれ変わり、一時期はわたしの家で一緒に暮らしていたこともあったとか
今はアルバイトをしながらわたしと同じ高校に通いプロボクサーを目指して頑張っている、ということなんだけど
この何だか良く分からない説明を何度されても何故わたしたちが両思いになったのかが今ひとつ理解出来なくって
本人に直接聞いてみてもいいのかな?
「あのう、わたしたちってほんとに恋人同士なんですか?」
「えっ?」
あれっ?
彼が立ち止まって固まってしまった
そういえば
彼について教えてもらったことがもう少しあった気がする
たしか
ものすごく照れ屋で口下手で、とても強くて優しい人なんだって
continue(次回に続きます)↓