「すみませんでした」
ペコリと頭を下げ、顔を上げた望美の表情に
誰もがほっと胸をなでおろした。
「ちょっといいですか?」
望美の件がひと段落した後、弁慶は咲弥に声をかけた。
弁慶の呼びかけに、咲弥も頷き彼の後を追いかけた。
「なんでしょう?」
「・・・・・・・・・」
「弁慶くん?」
「・・・・・・・・・・何も訊かないんですね・・」
黙って何も言わない弁慶に声をかけ、手の伸ばした瞬間
腕をつかまれ胸に引き寄せられ顔を上げるとじっと見つめる弁慶がそこにはいた。
「何を訊いてほしいの?名前?」
言っている意味がわからないとでも、言いたげな顔で逆に尋ねられ
弁慶は言葉を詰まらせる。
「理由があるのでしょう?そうしなければならない理由が・・・」
それを咎める理由は自分にはない。と告げる咲弥に
弁慶は何も言わずそっと抱きしめた。
「弁慶くん?」
「すみません。では、行きましょうか」
「・・・・ええ・・・・」
いつもの笑顔で先を歩く弁慶を咲弥は、ただじっと見つめるだけだった。