記憶の奥で(10) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

どうしてだろう?こんなにも胸が痛い。


心が苦しい―――。


会いたくて 会いたくて。


けれど、それも許されない気がして体が動かない。


貴方の微笑み、貴方の声。


ずっと ずっと欲しかったのに――――。


今は、こんなにも遠い存在に感じて

私は貴方の傍にいてはいけないような気がして。









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「・・・・・・」


「・・・・・・」


一瞬、本当に一瞬沈黙が部屋を包み、克彦さんと私は見つめあう。

さらりとカーテンが風になびいて、克彦さんの銀色の髪を撫でた。


「先生は、用事で今はいません」


「・・・・見れば分かる」


いつもと変わらない口調、そっけない態度に心の中で苦笑し

そっと視線を落とした。

私のその行動に、克彦さんの顔が一瞬険しくなったのを

このときは知らなくて。


「・・・・・・・壬生先輩、どこか怪我でも」


「それ以外何があると?」


「そ、そうですよね・・・」


ぎろりと睨みつけられ慌てて別の言葉を捜すが

うまい言葉が見つかることは無くて、再び沈黙が辺りを包んだ。


「・・・体調は、大丈夫ですか?」


「ああ・・・・」


ほっと胸を撫で下ろす。家に駆けつけた時は、心臓が止まるかと思った。

青白い顔、開くことの無い瞳。

今思い出しただけでもぞっとする。











********


俺の体調を尋ね、「大丈夫」だという意図の言葉を俺が口にして返した瞬間

こいつの表情が和らいだことに、なぜか頬が緩む感じを覚えた。


(なぜ)


どうして、俺は安堵した?

なぜお前は――――。


「・・・・壬生せんぱ」


「克彦」


「え?」


「克彦だ」


なぜお前は俺を呼んでくれない。

俺を見つめているのに

けれどお前は俺をみていないような気がして。


「でも・・」


唇を震わせ何か言いたげな瞳。

けれど躊躇する言葉に、苛立ちを隠せない。


「俺がかまわないと言っている」


俯いた仕草にも苛立つ。

顎を掴み俺の見つめるようにあげると、揺れる瞳と交差して。










思わず口付けた。















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あとがき

何をいきなりしているんですか~~!(〃∇〃)

手が勝手に動いて結果ですけどね。