「た、玉依姫様が!」
聞こえた言葉。背中に冷たい何かが落ちる。
「亮司さん」
ほんの、一週間前。僕に笑顔を向けて手を振り楽しそうに言葉をかけてくれた君が
今は何も話さない。瞳を開かない。
「・・・状況を」
動揺を隠し切れなくて、それでも冷静に状況を把握しようとしている自分に吐き気がする。
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「大丈夫ですか?」
卓が肩に手を乗せ亮司を心配そうに声をかけた。
他の守護者も同じだったようで、感じる視線と瞳で物語っている。
「珠洲ちゃんは」
「守護者が、村へ連れてくるようです。とりあえず守護者が帰ってきてからではないと」
「そう・・ですか」
俯き小さく呟くと珠紀は、亮司を見上げる。
亮司はいつもと変わらない表情を浮かべ、卓と今後について話していて
珠紀の視線には気がついていないようだ。
(卓さんも、天野さんも・・・・)
「大好きな人です」
嬉しそうに自分に言った珠洲の言葉、表情が頭をよぎる。
頬を赤らめて嬉しそうに亮司の事を話す珠洲の姿。
今、彼女に何が起きているのか。
そもそも、なぜこの村に来る必要があったのか。
ちらりと卓へ視線を向けるが、珠紀の視線に気がつく事無く
少し険しい顔つきで、亮司と何か話している。
他の守護者へ視線を向けると、複雑そうな顔を浮かべ何かを考えているようだった。
(私だけ・・知らないの・・・?)
きぃぃぃ・・・・ん
「珠紀先輩?どうかしましたか?」
急な耳鳴りに、思わず耳を押さえた珠紀に隣で座っていた慎司が
心配そうに声をかける。
「ううん・・。大丈夫」
「何か、感じたんですか?」
「そうじゃないの。少し耳鳴りが――」
ガラリ――――。
言葉を続けようとした珠紀。けれどそれは開かれた音と
現れた人物によって止めざるを得なかった。
「連れてきた」
そっけない言い方だが、抱き上げて連れてきた人物を見つめるその瞳は
優しく、暖かで・・。
すぃ・・と彼と変わるように彼女の元へ亮司が近づくと
彼に抱かれながら眠っている珠洲の姿が珠紀の瞳に映った。
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あとがき
かなり・・。本当に久しぶりに書き上げてます。
今回は緋色のメンバーが出てますね。