克彦さんの記憶は、一向に戻ることがなく二週間が過ぎた。
今日の授業が自習になって、みんなは出された課題を早めに仕上げると
仲良しのクラスメイトとおしゃべりをしている。
クラスメイトを横目で見ながら、グラウンドへ視線を向けると
克彦さんのクラスが体育の授業をしているのがわかる。
キラキラとお日様の光に当たる克彦さんのきれいな銀色の髪。
クラスメイトと一緒になにやら雑談をしている姿は、あの頃と何も変わらないって思って。
胸が痛んだ。
(克彦さん)
心の中で呟いても、克彦さんに聞こえることはなくて・・。
下唇をかみ締めて泣きそうな自分を叱咤した。
「珠洲・・・・」
私の様子に気がついたのか、エリカが声をかけてくれた。
いけない。
心配そうな顔を見せるエリカに迷惑をかけてはいけない。
慌てて顔を上げると、私は笑顔を見せた。
少し、わざとらしいかな?
エリカは、そんな私の心を察したのか何も言わず黙って頷き頭をぽんぽんと叩いてくれた。
そんな優しさに思わず泣きそうになる。
「ちょっと、保健室にいくね」
「―――わかった。休み時間によるね」
「うん」
教室を逃げるように出ると、私はそのまま保健室へ駆け込む。
保健の先生は私の泣きそうな顔を見ると、少し休むように告げて
「用事があるから、寝てなさい」と告げると保健室から出て行く。
開いている窓から気持ちのいい風が私の頬を撫でる。
心地のよい風に思わず目を閉じた。
ガララ―――
扉が開く音が聞こえた。
先生が戻ってきたのかな?それとも?
入り口のほうへ顔をのぞかせた。
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あとがき
じ、じかいこそ・・・。