第四章 第四話 何度この手を汚しても(4) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

さまよう魂が引き合うように、運命も引き寄せられた。







熊野では何が起きているのか。

弁慶は静まる闇の中を見つめ、浮かぶ満月を見上げた。

月の光が体を包み、彼の姿を幻想的に浮かび上げ、

その姿を見つけた望美は息を呑んだ。

同時に、頭を何かが掠めた。

けれど、それが何なのかは思い出せない。


この時空へ飛んできた瞬間から感じている出来事。

それは、弁慶の姿と将臣の姿。

どちらも苦しく切ない瞳で何かを見ていた。

それが何を見ているのか、どんなに思い出そうとしても思い出すことができず。

激しい痛みが体を襲うのだ。


(どうして・・・・。あの時空を思い出そうとするとこんなにも)


望美は胸に手を当ててぎゅと握り締めた。


「望美さん?」


いつもと変わらない声色で尋ねてきた弁慶に顔を向けると

絶えることない笑顔で自分を見ている姿が瞳に移る。

その姿があまりにも綺麗で。

望美は心を奪われる。


「何か、ありましたか?」


「え、いえ・・・。あの・・・」


望美の姿にくすりと笑みを零し尋ねる弁慶に

顔を頬を赤く染めて、言いよどむ姿を見ながら

感じる別の視線を弁慶は読み取っていた。


「明日はまた探索がはじまります。遅くまで起きていたら寝坊しますよ」


「あ・・・。はい・・・。ではおやすみなさい」


ぺこりと頭を下げて、火照る顔を抑えながらバタバタと廊下を歩いていく

望美を見送りながら弁慶は、さきほどまで見せていた笑顔から

すぅ・・・。と冷ややかな瞳を見せ後ろへ振り向いた。


「覗き見とは・・・・感心しませんね」


「・・・・気がついていたの?」


暗闇から現れた彰子に、答えることもせず黙って見つめるだけ。


「・・・・覗きをしているつもりはないわよ。偶然」


「そうですか・・・」


これ以上の会話は無意味なのか、弁慶は彰子へ小さく頭を下げると

廊下を歩き始める。


「ひとつ聞きたいわ。弁慶殿」


「・・・・・・・・」


「源氏へ弓引くものは、平家と同じ道を辿るわよ」


「・・・・おっしゃっている意味がわかりませんね。僕は源氏に弓引くことなどないですよ

 もちろんここにいる仲間は、ね」


表情を変えず答えた弁慶に、彰子も満足げにうなずき反対の廊下を歩き始めた。


「―――――どう思います?ヒノエ」


「さあ?【源氏の棟梁に何か含みあり。】なのかもしれないな」


暗い廊下の柱に背を当てながら腕を組んでみていたヒノエに声をかけると

いつもとは違う声で返答した。


「厄介ですね・・・。熊野への影響も?」


「今のところない」


「・・・・・・・送られてきた意味もだいぶ理解しました」


「ああ・・・。おそらく」


二人は、彰子がいなくなった廊下をじっと見つめていた。

















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あとがき

ヒノエの出番が少ない・・・・・。

話も進まない・・・・。