超えてはいけないこの境界線だけは(8) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

「珠洲は、今眠っているわ・・・。」


真緒は頬に手を当て、憔悴しきっている義妹の姿を苦しそうな表情で

見つめ、家を訪ねてきた亮司に告げる。

小さくうなずきベットで眠っている珠洲の姿に眉を寄せ、置かれている椅子に腰掛けると

額に張り付いていた髪をそっと払う。


「何があったか・・・」


亮司の問いかけに、真緒は力なく首を横に振った。

そう。と短く答えると亮司は再び珠洲へ視線を向けた。


「はっ・・・う・・」


「珠洲?」


漏れた声に、二人の視線がそちらへ向かう。

起きた様子はないけれど、苦しそうに顔をゆがめ

体が震え始める。

何かに逃れるためなのか、シーツをきつく握り締め

あまりの力に手からうっすらと血がにじみ始めた。


「真緒、包帯を」


「ええ」


亮司の声に答える様に、真緒は部屋から慌てて出て行く。


「―――けて」


「珠洲?」


「いや・・・・・。もう・・・やめ・・て」


「珠洲・・・大丈夫だ」


「たすけ・・・て・・・」


閉じた目からは、涙が零れ落ちる。

痛々しいまでの彼女の衰弱に、亮司はきつく唇をかみ締めた。


何が起きたというのだ。


彼女のこの状態に何もできないもどかしさと、無力さに

激しい苛立ちを覚えた。


「亮司・・・さん」


「珠洲」


起きたのか?そう思ったけれど

珠洲の瞳が開いている様子も起きた様子もない。


「亮司さん・・・・助けて・・」


「珠洲・・・。守ってあげる。あなたをどんな者からも守ってあげる」


起こさないように、そっと抱きしめると

無意識に珠洲は亮司の背に手を回し、そのぬくもりに安心したのか

震えていた体がとまり、覗き込むと規則正しい寝息が聞こえ始めた。


「珠洲・・・・。僕はまだあなたを守れている。そううぬぼれてもいいかな」


そっとベットに横たえると、触れるだけの口付けを額に添えた。






















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あとがき

亮司さん視点ってやっぱり難しい・・・。