「てこずらせやがって・・・・
今日はツイていやがる
こんな上玉が、二人もそろうなんてな」
「旬麗・・・・」
「咲弥さん・・・・」
(なれない世界だから?違う・・・・もしかして・・・今日は?)
咲弥は軽く呪文を唱えようとするが体が
その力を押さえ込もうとする。
おそらく、無理やりにでも解除したらそれこそ
ここにいる旬麗に何を及ぼすかわからない。
ぽたりと咲弥の腕からも頬からも血が流れている。
「さあ、来てもらおうか?
犯して、ばらばらに切り刻むか」
震える旬麗を庇うかのように抱き寄せる
咲弥の腕を一匹の妖怪が掴み
立たせ、咲弥の頬をべろりと舐める。
「いいねぇ。その顔・・・・ぞくぞくする」
「止めて!咲弥さん!!」
「「咲弥!旬麗!」」
両サイドから飛び出した悟空と悟浄は咲弥を掴んでいる
妖怪にとび蹴りを食らわせた。
「今のが、クロスカウンターってやつですね」
「何やっているんだ!このバカコンビ!!」
「でも、助かったよ。二人とも」
「咲弥!怪我!」
「大丈夫だから」
ふらつく身体を、八戒が支える。
「ごめんね・・・汚れちゃう・・・」
「気にしないでいいですよ。」
咲弥の姿に眉間のしわを深くし
倒れている妖怪たちを見て三蔵は旬麗に尋ねる。
「あんたの恋人じゃないんだな」
「ええ・・・背格好は似てますが」
旬麗は意を決して妖怪たちに尋ねる。
「慈燕を・・・慈燕を知らない?
そこの人と同じ銀髪の人!?」
旬麗の言葉に妖怪たちはあっけに取られる。
「知らねぇな!この辺で銀髪妖怪は俺だけだ!」
銀髪の妖怪は叫ぶように告げると
緊張の糸が切れたのか旬麗は崩れ落ち
それを三蔵が支える。
「旬麗!」
「気を失っているだけ・・・・森を走ってきたんだから」
休ませて欲しいと告げる咲弥に三蔵は旬麗の身体を抱き上げ
ジープへと寝かせる。
「咲弥・・・あなたの怪我も相当なものですから・・・。
手当てをしましょう」
「ごめんなさい・・・・・」
ゆっくりと咲弥をジープまで運ぶ八戒を
悟浄も悟空も心配した面持ちで見つめる。
「オイ!待ちやがれ!勝手に持ち帰るんじゃあねェよ!」
「その女達は俺たちのエモノだ!!」
「何なら、お前達もミンチにしてやろうか?」
下品な笑い方で叫ぶ妖怪たちに
くるりと体ごと悟浄はむけると
杓錠を手に告げた。
「今はあんまし、ヒトゴロシしたくない気分なの、俺
だから大人しく帰ってクソでもして寝ろや。オーケー?」
言葉を失う妖怪を背に再び歩き始めた三蔵たち
怒りに震えている妖怪は
悟浄の容姿をみて下品に笑い大声で話し始めた。
「おれ聞いたことがあるぜ、人間と妖怪の間に生まれた子供は
髪も目も赤いんだってさ」
「人間と妖怪の間にできた出来損ないかあ?」
「なあ、アソコの毛も赤いのか?」
下品なものの言い方に、口を出そうとし
振り向いたときに見た光景に悟浄は驚く
三蔵は口に銃をいれ
八戒は咲弥を腕の中に入れて妖怪の顔を掴み
悟空は服を掴みあげている。
「ほら。『口は災いの元』っていいうでしょう?」
「ひっ」
「続きを言いたいなら、あの世で言います?」
「わ、悪かった・・・助け・・・」
「詫びるくらいなら、最初っから言わなきゃいいーんだよ。バーカ」
銃を拭きながら、座り込んでいる妖怪たちに告げると
再びジープへ向かう。
「くそ・・・」
後ろを向いた瞬間妖怪たちが三蔵たちに向かって襲い掛かってくる。
「なに?そんなに知りたいの?アソコの毛の色」
悟浄が杓丈を構え襲ってくる妖怪を
切り刻み倒していく
「ま、確かめられンのは
『イイ女』だけだけどな」
すでに事切れている妖怪たちに告げると
少し先を歩いていた三蔵たちに向かって歩き始めた。
「咲弥チャン。大丈夫?」
「うん・・・・。ありがとう」
「あ?」
八戒がジープの運転のため
すこし疲れているのか、悟浄に身体を預けている咲弥は
上目遣いで悟浄へ視線をあげ感謝の言葉を述べる
悟浄にとってみたら、何故感謝されているのか解らない。
「あー。俺だけじゃ・・・」
「助けに来てくれたことは、みんなに感謝してるの
それより嬉しかったのは」
悟浄の髪を優しくなでながらゆっくりと告げる。
「悟浄が、『約束』を守ってくれたこと」
「あ、あー・・・・」
「だから、嬉しかったの。ありがとう
少し悟浄の事解ってきた」
それだけ言うと、疲れたから眠るとつげ
ゆっくりと瞼が落ち眠りについた咲弥に目を開きながらも
嬉しそうに口角を上げる。
「今回は、悟浄の一人勝ちでしょうか?」
「・・・・・さあな」
前では三蔵と八戒が後ろの会話を聞きながら
ジープを村まで走らせている。
いつの間にか、悟浄が身に纏っていた過去との向きあいが
変っていることを三蔵も八戒も、悟浄の隣にいた悟空ですら
感じている。
それも、すべて今、安心して眠っている一人の女が成しえたことだと
身をもって感じていた。