「つまり、その【慈燕】って男は純潔の妖怪ってことか?」
「ええ・・・・慈燕は本妻のお子さんだそうですが
悟浄が本妻に殺されかけたところを救ってくれたとか」
悟空も咲弥も黙って八戒の話を聞いている。
「普通の子供なら、殺されることなんて
なかったんでしょうけれど
悟空達も知っているように・・・咲弥は知っていませんね」
「悟浄は【人間の女との子供】でしょう?」
「え、ええ・・・」
八戒は驚きを隠せず咲弥を見る。少なくとも彼女に悟浄の過去を話したことなどない。
八戒の視線をまっすぐに受け止めながら話を続けるように諭す。
「咲弥がいったように、人間の愛人との間に生まれた混血児
いわゆる【禁忌の子供】なんですから」
「禁忌ってなんだろうね」
八戒の話が終了した直後に咲弥はつぶやく
三人が咲弥を見るが彼女は天井を見上げている。
「生まれてきた子供には罪は無いのに・・・・
人を愛することも・・・罪じゃないのに・・・・
それが、血のつながりがあろうとなかろうと」
最後の言葉には八戒が誰よりも敏感に反応する
ソレを三蔵は黙ってみていた。
咲弥が気がついているのかいないのか黙った八戒に答えない。
「咲弥・・・・」
「大丈夫よ・・・・・少し・・・外に行くね」
心配そうな顔を見せる悟空に咲弥はそれだけを告げると
三人を残して出て行く
残ったのは沈黙のみ
部屋から出ると、外の冷たくなっている風を受ける。
「・・・・ねえ・・・・あなたならどう思う?
きっと貴方なら、『仕方ありませんね』って笑う?」