第三章 拾九話 決して届かぬ月のよう(19) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

何故だろうか?

不意に思い出すのは、己の遠い過去の記憶。

どれだけ贖罪の炎に焼かれようとも

この想いを貫くのだと。

そう決めて、ここへ来た。


けれど・・・・・・・

背筋が凍った。

姿を見た瞬間。


己の過去を知られたくなくて、

己の罪を知られたくなくて。


「どうしたんだ?お前」


「ヒノエ・・・」


気がつくと辺りが暗くなっている。

どれだけここにいたのかすら覚えてない。


「彼女の素性、調べられましたか?」


「まあな」


「歯切れが悪いですね」


「あの女を探って三人死んでいる」


「・・・・・・」


ヒノエの言葉に弁慶は腕を組み思考に耽る。

そう、彼女。彰子の存在は確かに大きい。

けれど何か府に落ちない部分が多いのだ。


「鎌倉殿が何を考えているのか?」


「さあ、しかし。今回はかなりやばいかもしれないな」


「それは、君自身の意見ですか?それとも熊野自体の?」


「両方だ」


「・・・・なるほど」


再び思考を落としそうな弁慶に、ヒノエは文書を差し出す。


「とにかくこれが、あの女に関する文書だ」


「ありがとうございます。ヒノエ」


弁慶の返事と同時にヒノエの姿も暗闇に消える。

残った弁慶は文書を手にし、目を閉じた。