何故だろうか?
不意に思い出すのは、己の遠い過去の記憶。
どれだけ贖罪の炎に焼かれようとも
この想いを貫くのだと。
そう決めて、ここへ来た。
けれど・・・・・・・
背筋が凍った。
姿を見た瞬間。
己の過去を知られたくなくて、
己の罪を知られたくなくて。
「どうしたんだ?お前」
「ヒノエ・・・」
気がつくと辺りが暗くなっている。
どれだけここにいたのかすら覚えてない。
「彼女の素性、調べられましたか?」
「まあな」
「歯切れが悪いですね」
「あの女を探って三人死んでいる」
「・・・・・・」
ヒノエの言葉に弁慶は腕を組み思考に耽る。
そう、彼女。彰子の存在は確かに大きい。
けれど何か府に落ちない部分が多いのだ。
「鎌倉殿が何を考えているのか?」
「さあ、しかし。今回はかなりやばいかもしれないな」
「それは、君自身の意見ですか?それとも熊野自体の?」
「両方だ」
「・・・・なるほど」
再び思考を落としそうな弁慶に、ヒノエは文書を差し出す。
「とにかくこれが、あの女に関する文書だ」
「ありがとうございます。ヒノエ」
弁慶の返事と同時にヒノエの姿も暗闇に消える。
残った弁慶は文書を手にし、目を閉じた。