あの人は僕にとって、危険な人物かもしれない、それなのにこんなにも心を乱され
そして何時の間にか、僕の瞳は彼女の姿を捜している。
「どうしたんですか?」
「いえ、なんでもありませんよ」
「そうですか、あ!そういえば譲くんがみんなのためにお弁当を作ってくれたんですよ
そろそろ休憩にしませんか?」
弁慶の顔を覗きこむように、屈託のない笑顔で訪ねる白龍の神子こと春日望美。
その笑顔に、弁慶もつられて笑顔を見せる。
「では、少し休憩しましょうか」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに感謝の言葉を述べると望美は白龍や朔の要る場所へ走っていく、
その姿を微笑ましく見つめ、きょろりと辺りを見渡す。
「何をお探しで?」
「・・・特にありませんよ。ヒノエ」
「へえ?」
「なんです?」
少し驚いたもの言い方のヒノエに、弁慶はいつもと変らない表情で訪ねる。
「てっきり姫をお探しかと思ったけど」
「姫はあちらにいますよ」
「違うな。あいつも可愛い姫だが、お前の捜している姫じゃないだろう?」
「・・・いやに絡みますね」
少し困り顔でヒノエを見つめるが、そんな顔がヒノエに通じることなく
にやりと笑みを落とした。
「あの村での後。お前、変ったよ」
あの村。
あの小さな女の子、雪とのささやかな時間。
見つめられて心を奪われたあの村。
「そうですか?」
「へえ?まだそんな風に言うわけだ」
「僕は、なにも言ってませんよ。貴方が勝手に思っているだけだ」
「本当にそういいきれるのかい?」
ヒノエは弁慶の答えを聞かず側から離れていく。
後姿を見送りながら、外套を深く被る。
まるで自分の全てを隠すかのように。
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あとがき
弁慶の心の中を描きたくて書いてみました。
出来ているのか微妙ですが・・・。