どの運命でも、あの人の心に私が入り込む隙間はないって分かっていた。
私は彼と、一緒になりたくてここに来たんじゃない。
目の前の光景に、激しい痛みと苦しみが広がっていても
「少し休みましょうか?」
「そうですね」
互いを労わる二人を見つめながら、その場に腰を下ろした。
少し離れた所では二人の会話が聞こえる。
だけどそれがどんな内容なのかは知らない。
知りたいとは思わない。
「咲弥」
呼ばれて声を上げると、手招きをして呼び寄せる将臣の姿。
立ち上がり彼の隣に座ると頭を撫でられた。
「無理すんなよ」
なぜそうするのか分からない様子の私に将臣は少し傷ついた瞳で告げる。
その言葉が胸に痛い。
瞳が熱くなる。それでも必死になって笑顔を見せた。
「バカね。無理はしてないわ。選んだ道よ」
「・・・そうか・・」
私の言葉に将臣もそれ以上何も言わない。
いえるはずがない。
この運命を受け入れたのは自分だ。
彼女が、前の運命を受け入れることが出来なくなった瞬間。
全ての運命が変っているのだ。
知っているのは私だけ。ううん、彼。私達を少し遠くから見つめているリズヴァーンと二人。
彼の瞳も何かを物語っている。
「咲弥?」
「ごめん、ね」
「本当にどうしたんだ?」
俯いて小さな声で謝罪した私に将臣は不安そうに顔を覗き込んだ。
「大丈夫なの・・・。大丈夫だからね」
「・・・・・お前、無理しすぎ、もっと俺達を頼ってくれてもいいのに」
「沢山甘えているわ。十分すぎるほどに」
立ち上がり、私は逆に将臣の頭を撫でる。
「俺は子供か?」
「子ども扱いしてないでしょ?敬愛のしるしよ」
少しふてくされた言い方の将臣に笑顔で答える。
「さて、先は長いわ。もう少ししたら出発よ」
差し伸べた私の手を掴むと、埃を払い将臣も立ち上がる。
「そうだ、な・・・。本当に」
「くどいわ。大丈夫よ。誰も悲しい想いなんてさせないから」
だから封印するわ。私の心を。
そのために私はここに存在しているんだから
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あとがき
熊野へ向かっている最中の一コマということで・・。
だけど、絡みが少ない!
ヒロインも将臣も、二人だけで話しているし。。
まあ、それも必要ってことで。