第一章 五話 無色透明な世界(4) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

長い沈黙だったのかもしれない

けれど他の人からみたら短い沈黙だったかもしれない


ゆっくりとこちらをみた瞬間

何かが僕の心の中に芽生えていた

それは何なのか分からないけれど



「こんにちわ」



春の日差しと同じような暖かな微笑を彼女は僕に見せてくれた







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





「そうですか・・。知人とこちらへ」


「はい、ここで待ち合わせだったのようでした

 私は、ただ着いて来ただけですけど」


微笑みながら僕にここにいる理由を答え

彼女はもう一度桜へ視線を向けた。

何故だろうか、彼女はどこか雰囲気が変っている。

僕と同じ場所を見ているようで、けれど見ていない。


「どうかしましたか?」


「いいえ。なんでもありませんよ」


考えていることを気付かれたくなくてごまかした。

そんな僕を彼女はじっと見つめる。


「あの・・・」


「ごめんね」


初めて見せた彼女の表情に言葉が詰まる

何故、そんなに悲しそうなのだろう。

どうして、謝ることがあるのだろう


「どうして、僕に謝るんですか?」


「・・・・ごめんなさい。なんでもありませんから」


俯いて顔を上げたときには、すでに笑顔で

僕はそんな彼女を怪訝そうに見詰めているだけだった。


それが僕と君の最初の出会い



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「そうですか、知人とこちらへ」


隣で柔らかく笑顔を見せて、私に微笑んでくる彼

その彼が誰なのかは知っている。

けれど、彼に彼の名前を知っていることを悟られてはいけない

それは彼が、とても頭がいいから。

ほんの些細なことでも彼には、見通す力を持っているから


外套を被って、俯くと表情はあまり見えない。

表情をあまり知られてはいけないのだろう

彼の髪はあまりにもこの世界では異質だ。

色素の薄い髪の色。

他の世界ならそんなこともないだろう

けれど、ここ《京》では違う。

幼い頃の彼は・・・・・。

ふと彼が私をじっと見つめているのに気がついた


「どうかしましたか?」


「・・・いいえなんでもありませんよ」


ごまかすように、笑顔を見せた彼の姿

思わずだぶってしまう。


ああ・・・・・・・。

この人は、本当に自分という存在を隠すのがこれだけ上手なのだと


「あの・・・」


「ごめんなさい」


だからこそ、彼はあの決断をしてしまうのだ

誰にも悟られず、誰にも気付かれないように

ゆっくりと、そして確実に。


「どうして、僕に謝るんですか?」


「・・・ごめんなさい、なんでもありませんから」


一瞬の私の表情を見逃すはずもなく

彼は私を怪訝そうな顔で見詰めるだけ。










ごめんなさい


どんなに謝っても足りないくらい


だけど 守りたいから


守るとはおこがましいけれど


それでも貴方の心を守ることが出来るなら