キセキノハナ(19) ~愛する人 愛される人 | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

「ゆらゆらと・・・」


澪の言霊が森を包む

同時に広がる禍々しい空気

守護者達は、澪を取り囲み護るかのように

東西南北に立ち辺りをうかがう


「来るか・・」


「まだだ」


「あいつがいれば問題ないはずだったろ?」


「今、行っても仕方がない」


何時ドコから来てもおかしくない緊張感が

守護者達を澪を包み始める

初めは小さな音が聞こえただけだった祠

今では大きな音を立てて激しく揺れている


「・・・汝を」


「危ない!」


澪が最後の言霊を告げようとした瞬間

一斉に澪めがけて木々たちが襲い掛かる


「させるかよ!」


「はっ!」


鋭い刀のように地面に突き刺さる枝をなぎ払い

守護者達は攻防を開始する


〔邪魔などさせぬよ、守護者たち〕


「現れやがった」


〔大人しく帰れば、殺さずにしておいたものを〕


「それでは駄目なのよ」


〔・・・・おぬしに何が分かる〕


「お願い。この人を解放してください」


〔そなたにこの娘の苦しみも憎しみも分からぬ

 この娘は私を望んでおるのだ〕


「小鳥さん・・・。あなたが立ち向かわなければ

 貴方は」




「澪!」


突然森に響いた声に

誰もが振り向く


「おまえ・・」


「なん・・で・・。お前達この祠・・」


飛鳥は、澪を囲み驚いた顔を見せている

守護者達を信じられない様子で見ている

澪と守護者に向かい合ってる小鳥の姿


「ここは・・・小鳥が大切にしている場所だ

 お前たち・・何を」


私ここにいることが出来て幸せです


飛鳥の頭をよぎるのは

嬉しそうに微笑を浮かべる小鳥の姿


「何故・・」


「どうしてここに来たの」

澪が手を握り締め

きつく飛鳥をにらみつける


「澪、いくらお前が玉依姫でも赦されることではない

 ここは、小鳥がとても大切にしている場所

 それを勝手に・・・。何故なんだ!


初めて澪に見せる怒りの姿に

誰もが驚きを隠せない


「飛鳥さま・・」


「小鳥」

飛鳥に振り向き涙を浮かべ駆け寄る小鳥を

優しく抱きしめ再び澪と守護者を見る


「答えろ、澪」


「貴方には、もう理解できない

 黙ってみていて」


「澪!」


「お前、本当に分からないんだな」

「なに・・を」


「下がりなさい」


「天野さん」


呆れた物言いの守護者に戸惑いを隠しきれない

飛鳥の前に天野が槍を持ち残りの守護者を下がらせる

「どういう事ですか?

 貴方なら知っているのでしょう?天野さん」


「ああ。知っている

 それにかなり失望したね」


冷ややかな言葉に飛鳥は眉を寄せる

「お願いです・・・蓮さん」


「いくら君の頼みでも聞けないよ澪」


澪が必死に首を振るが天野は聞き入れない


「澪、君は決めたのだろう」


「・・・・・姫」


「・・・・・」


「澪」


「分かってます・・分かって・・」


天野の言葉に澪は俯いて

再び言霊をつむぎ始める


「汝の力・・」


「・・・めろ」


「小鳥?」


澪の言葉に反応するかのように聞こえた小鳥の声

覗き込むように言葉をかけるが返事はない

身体を震わせて小さな声で何かを言っている


森が一段と騒がしくなる

いつの間にか辺りには無数のカラスが集まって

こちらの様子を伺って見える


「ちぃ!」


「姫!」


襲い掛かるカラスの集団に

守護者達は澪を傷つけさせまいと必死に攻防を続ける

飛鳥は何が起きているのか分からない


「飛鳥・・さま」


「小鳥?大丈夫か」


「お願い・・・あの祠は・・」


涙を浮かべ告げる小鳥に

飛鳥はなんと答えたらいいのか分からない

困惑した顔で小鳥を見て

再び澪へ視線を向ける


「お願い!戻って!」


澪の悲痛な声が森にこだまする


「・・・一体なにを」


「君の為だ。そいつの受け入れを自力で

 離さなければ本気で相手をしなければならない」


「天野さん?」


〔小ざかしい・・・まねを〕


小鳥と飛鳥の前に立ち

天野はきっぱりと告げると槍の先を小鳥の喉元へ突きつけた

その光景に驚いた飛鳥だったが

聞こえてきた声に驚愕する


〔お前達に何が出来る?〕


「澪は、小鳥のためといった

 だがそれは飛鳥の為でもある

 お前がそれを自分で壊すつもりか」


〔強制に常世へ返すつもりか?

 出来るはずなどない〕


「それはどうかな」


「小鳥・・」


〔この人は渡さない

 誰よりもにくい・・・・お前達が

 けれど誰よりも憎いのは〕


飛鳥の声を無視し、小鳥がにらみつけたのは澪


〔今更・・・なにが私のためだ

 この人のためだ

 お前の無慈悲な言葉に私は・・・コノヒトは〕


「・・・・あのときの言葉を撤回するつもりはない

 望むのは飛鳥の幸せ・・・

 そして、貴方の本当の平穏」


〔私の平穏・・・それはお前が消えてなくなることだ!〕


小鳥の声に呼応するかのように

大地が大きく揺れ始める



〔これで・・・最後だ〕