世界保健機関(WHO)は、メキシコで159人が死亡し、米国でもメキシコ人の幼児が死亡したほか、ドイツ、オーストラリアなど9ヶ国で感染者が出ていることを受けて、29日、豚インフルエンザ(H1N1型)の世界的大流行(パンデミック)のリスクが差し迫っていると、警戒水準を「フェーズ5」に引き上げた。「フェーズ5」とは「パンデミック」を意味する「フェーズ6」の1つ手前である。
 今回、世界的大流行の恐ろしさは続くが、豚インフルエンザ(H1N1型)は「弱毒」ということで、鳥インフルエンザ(H5N1型)と比べれば遙かに危険度は低い。パニックを起こさぬよう、正確な情報と正しい予防行動によって「強毒性」の鳥インフルエンザ(H5N1型)の爆発的流行に対する予行演習となるだろうか。金融危機に引き続いて、世界は大きな試練を迎えている。
 ゴールデンウィークを目前に控えている中(既に休暇に入っている人も多いようだが)、旅行者は戸惑うばかりだろう。かのスペイン風邪の時は、これほどまでに人や物資が世界を飛び回り、行き交うことはなかった。時代はグローバルに発展を遂げている。人類の驚異である新型インフルエンザが世界中をあっという間に席捲するシステムは出来上がってしまっている。
 情報が曖昧なまま広がっていくと、復調を見せ始めた経済も大打撃を受けかねない。既にメキシコ政府は、豚インフルエンザの感染拡大を防止するため、5月1~5日までの間、食品、医療、輸送、金融サービスなどを除く経済活動を停止するよう求めている。各国の大手企業が工場などを閉鎖してゆけば、それこそ大きな経済的な損失は回避できなくなる。人命か経済か。いずれにしても、重要な選択を迫られるが、今回は「弱毒性」のH1N1型でよかったと思うしかないし、これがH5N1型であったことを想像すると背筋が寒くなる。正確な情報に従って正確に対応してゆくことしか、今のところ私たちの取る術はない。
 ただ、WHOが、抗インフルエンザ薬「リレンザ」を製造するグラクソ・スミスクラインや「タミフル」を製造するロシュとギリアド・サイエンシズに治療薬の製造拡大を訴えたが、中でも「タミフル」に関してはイヤな人物が頭に浮かんで、興ざめする。というか、今回のパンデミック騒動の裏に、また何か政治的な駆け引きでもあるのではなかろうかと、災いを呼びそうな「チーム」の人たちの顔が浮かぶのだ。

 米CNNの2005年10月31日の報道。その当時も、鳥インフルエンザ大流行の予測が世界中の人々を怯えさせていた。当時のアメリカ大統領は、あの、ジョージ・W・ブッシュ。そして、2006年11月8日の中間選挙で共和党が大敗するまで政権の実質的な権力を一手に担っていたのがラムズフェルド国防長官。この人たち、チェイニー副大統領がハリバートンのCEOを勤めていたのも含めて、世界的な事件となると、必ず関連してビジネスの臭いをさせる。だから、今回のパンデミック騒動も「ホント?」と疑いたくなってしまう。いかんな。
 カリフォルニア州に本拠を構えるバイオテック企業ギリアド社は、インフルエンザ治療薬として現在世界中から注目されている『タミフル』の特許を所有している。ラムズフェルド国防長官は、ギリアド・サイエンシズ社の株の多くを所有している。1997年からブッシュ政権入閣までの2001年の間、ラムズフェルド国防長官はギリアド社の会長を務めていた。ジョージ・シュルツ元国務長官や前カリフォルニア州知事の妻ピート・ウィルソンもギリアド社役員で多くの株を所有していた。
 サンフランシスコのシンク・イクイティ・パートナーズ社のアナリスト、アンドリュー・マクドナルド氏は「政界とこれほど繋がりの深いバイオ企業は他に類を見ない」と評している。
 これまでも、米国政府と日本は、世界最大のタミフル購入者だった。2005年度だけでも、米国防総省は兵士への配給用に5,800万ドル分のタミフルを注文していた。ロシュ社における2004年度のタミフルの売上は2億5800万ドル。それが2005年度になると10億ドルに跳ね上がった。今回、この騒動で、どれほどの売上を記録するのだろう。
 世界の人々の命を助ける医薬品企業が責任を果たし、人命を救うのは願っても止まない話で、どれほどの売上を上げようとも良いのだが、こういう政界との結びつき、しかも、近年災いをもたらしてきたであろう人々との癒着が明るみになると、「ホント?」という気持ちが湧き起こってしまう。イラクの時の、人命を軽視した政策や戦略を、見てきたから。まさか、政権を失って、金融危機に際して、「こんな手もあります」では、ないですよね?と聞きたくなってしまう。あ、お坊さんらしくないか。話題が。
 とにかく、末世の様相。正しく見て、正しく聞き…。正法を護持し、流布するしかない。