ある方のコメントに対して。 | 夢を見るのはもう止め。

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mahal(マハール)さんが権利放棄しました!

先日、ある方から、

以下のようなコメントを頂きました。

 

 

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心理学には抵抗感しかありまへん


普通の人と違うのか、どうなのか・・・
心理学というものには抵抗感しかないです。

心理学の魅力って何でしょう?
心理学で食べていける人が居るという事実
以外で何かあるものでしょうか?
心理を学ぶ本当の目的とは何か?
哲学するほど分からないのです。
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とのこと。

これは大なり小なり、多くの方が持ってらっしゃる率直な感想かもしれません。
このコメントに対しては、お返事を書いたのですが、改めてここに書いてみます。
 
心理学の目的は「客観的に観察可能な”行動”を科学的に分析することにより、人間の内心を推測し、その法則を記述すること」というものです。
これはワトソンの所謂「行動主義」的な色彩の濃い定義かもしれませんが、今でも通用するものだと考えます。
現代は認知心理学や認知行動療法の興隆が著しいので、全てを「行動」の科学、と言ってしまうのは早計かとも思われそうですが、それでも概ね、このような定義になると思います。
「認知」も含めて「行動」と捉える研究者もおります。
 
このように、心理学は「行動の科学」です。
「科学」である、というためには、検証可能性と再現可能性が必要です。
つまり、そこに記述された法則が実証的な実験に裏打ちされたものであるということと、その手法を行えば誰でも同じ結果が生じる、ということが必要です。
そこで心理学は実験を重視します。
 
この点、心理学はもともと哲学の範疇で議論されていた分野です。
そこに「内観法」という実験法を発明し、心理学を哲学から切り離したのがヴントという研究者です。
ヴントは1879年にライプツィヒ大学において、世界初の「心理学実験室」を公的に設立しました。
これをもって、科学としての現代心理学の起源とされます。
 
このように、心理学の歴史は「科学化」の歴史といえます。
心理学がお手本とした自然科学と同様に、「未知の法則を発見する」ということが、「行動の科学」としての心理学の目的だとも言えます。
 
「行動の科学」としての心理学、ということが最も色濃く表現されているのが「臨床心理学」という分野だと思われます。
 
心理学において、「条件づけ」という理論があります。
先ずは「レスポンデント条件づけ」について。
 
これは、パブロフの実験に端を発する理論です。
「パブロフの犬」という実験が有名です。
犬は、無条件刺激(餌)を目の前に出されたら無条件反応(唾液を流す)が発生します。
この点、無条件刺激(餌)と中性刺激(ベルの音)を対提示し続けることにより、中性刺激(ベルの音)のみを提示した時にも無条件反応(唾液)が生じるようになります。
ここで、ベルの音は「条件刺激」となり、それに対する唾液の流出は「条件反応」となります。
このように、「刺激(S)ー反応(R)」が新たに連合することを「条件づけ」といいます。
 
これを臨床応用した理論を「新行動S-R仲介理論モデル」といいます。
例としては「系統的脱感作」という技法です。
 
また、スキナーに始まる「オペラント条件づけ」という理論も、臨床応用されています。
これは、あるオペラント行動(自発的行動)に随伴して、後続する刺激事象を変化させることにより、そのオペラント行動の生起頻度を変化させる、という理論です。
 
例えば、檻の中に鳩を入れます。
その檻の中には、脱出用のボタンがあります。
鳩はたまたまそのボタンをつつく行動をとり、それにより、檻の外に出られます。
そのような手続きを繰り返していくと、鳩がボタンをつつく確率も高まり、回数も多くなり、確実に行動するようになります。
これは、「ボタンをつつく」というオペラント行動(自発的行動)に随伴する、「外に出られる」という後続刺激が、鳩のボタンつつきというオペラント行動の生起頻度を上昇させた例となります。
 
この理論は、臨床分野では「応用行動分析」として利用されています。
例として、「シェイピング」という技法が挙げられます。
 
これは、例えば、サーカスなどにおける「象の玉乗り」を想起してもらうと分かりやすいと思われます。
最初の内は、象は、玉乗りの玉などには何の関心もありません。
しかし、何らかの拍子に、象が玉に触れるとします。
その時に、象に餌を与えます。
そうすれば、象はより多く玉に触れるように行動するようになります。
次に、象が玉に足をかけるような行動をするとします。
その際にも、随伴して餌を与えます。
このように、最終的に象が玉に乗るまで、この手続きを繰り返します。
そうすれば、最終的に、象は玉乗りをすることになります。
この手続きを、臨床場面では、その人に適応的な行動を学習してもらうために行われます。
 
以上のように、基礎心理学の理論が、臨床場面で応用され、不適応行動の消去や適応的な行動の学習・再学習に使われているのです。
 
 
冒頭のコメントをされた方は心理学に対して「抵抗感しかない」との旨を仰っていますが、それは恐らく、巷に溢れる何の根拠も修練もなく、インチキなことを行っている「自称心理カウンセラー」や「似非心理カウンセラー」に対する印象なのだろうと思われます。
 
また、コメント主さんは「哲学するほど分からない」との旨を仰っていますが、本当に「哲学」されているのか謎ですし(そもそも「哲学する」とはどういう意味なのか不明)、単に心理学について「知識がない」「勉強していない」だけだと思われます。
 
 
 
 
以上、ザッとですがまとめてみました。