二重謝罪と点滅する赤文字 |  知り合いの9割以上は...並以下だ!

 知り合いの9割以上は...並以下だ!

  知れば知るほど薄くなるのが人間の価値...最初から長持ちしない

コンビニのレジ前で
バーコードリーダーの
効果音が鳴る速度と
スマホの決済画面の
二次元コード表示時間を
脳内で完璧に同期させる

画面の明るさを
最大にし
ポイントカード画面から
決済アプリへ切り替える猶予を
二秒と試算する

店員の無駄な待ち時間を
ゼロに抑え
流れるような決済を完了させる
配慮の行き届いた客を演じるため
指先を画面上で素早く走らせる

「ポイントカードはお持ちですか」
という問い掛けに対し
画面のロードが一秒遅延した

予定していたフローの
微小な遅れをカバーするため
口先が反射的に
「あ、すみません」
と音を吐き出す

謝罪によって相手の思考を停止させ
その隙に画面を読み込ませる計算

しかし、その小賢しい声に反応した
店員の手がスキャナーを引いたため
二次元コードではなく
画面上の通知バナーに赤光が照射された

読み込みエラーを告げる
無機質な警告音が響く

焦りを隠し
あくまで端末側の不具合であると装うため
再度
「すみません、あ、ごめんなさい」
と音量を上げて言葉を重ねた

二重の謝罪で
場をコントロールしようと
指先を過剰に叩いた瞬間
濡れた手指が画面の端を滑り
スマホが手元から跳ね飛んだ

画面はアクリル板の隙間を抜け
バーコードスキャナーのコードを巻き込みながら
店員側の作業スペースへと落下した

衝撃で保護ガラスにヒビが走り
画面には
「通信エラー:再読み込みしてください」
の表示が点灯している

店員は差し出されたままの手で
落ちたスマホを見つめ
レジの画面には「読み取り不可」
の赤文字とエラーコードが点滅している

後ろの並び客の靴音が一段引く音とともに
自分の右手が空中で
「すみません」
の形に縮こまったまま
ひび割れた画面に点灯する
エラー通知だけを見つめて静止する