次の日、退院の朝を迎えました。

採血と尿検査、退院診察をしてもらい、全て問題ないとのことで退院が決まりました。

こはるを部屋に連れてきてもらい、夫も迎えにきてくれました。

早くお家に連れて帰りたいと思ったので、朝一番で退院させてもらいました。
スタッフのみなさんがナースステーションの前で見送ってくれました。


帰り道、助手席でこはるが入った白い箱をひざに抱え、
「はじめてのドライブだね〜。」と話しかけながら、やはり涙がこぼれました。


赤ちゃんの脳の異常が告げられてから11日。

もう私のお腹の中にこはるはいない、いるのは私の膝の上で冷たくなったこはる、自分たちで決めたこと、仕方がなかったんだ、、、

そう思うようにしていました。

でも正直、色々なことに心がついていっていなくて、必死に崩れ落ちそうな気持ちを保っていました。


夫は、こはるのはじめてのドライブ、こはるを傷つけないよう、とにかく無事に我が家に連れて帰れるよう、いつも以上にゆっくりと安全運転をしてくれていました。

こはるを出産し、夫と3人で過ごしたあと、静脈麻酔をしてもらい子宮内をきれいにする処置を受けました。


30分後麻酔から覚め、車椅子で病室にもどりました。部屋について、トイレにいき、歩行もスムーズにできました。

病室では夫がこはるを抱っこして待ってくれていました。

病室から見える青空をこはるにもみせて、2人でたくさん話かけ、ありがとうと伝えました。

そして、こはるの唇に私のリップグロスを塗ってみました。

以前グリーフケアの一つして、赤ちゃんにお母さんが使っている化粧水や乳液、口紅やグロスを塗るという記事をみたことがありました。

女の子だし、一度はお化粧したいかな、なんて思い入院の荷物に持参していました。

ほんのりピンク色になって、親バカですが、とっても可愛くて可愛くて、また涙が出ました。


その後、市役所への手続きを代行してくれる方が病室にきました。

夫は死産届を記入しなければならないため、その方と話したり今後の火葬についての話をしていました。

私はこはるを抱っこしながら、火葬の話を聞かせたくなくて、抱っこをしながら子守唄をずっとうたっていました。


夕方になり、上のお兄ちゃんたちが義母とお留守番して待っているので、夫は帰宅しました。

私はこはるを預け、少し横になりました。
心配していた実母に連絡をしました。

夜20時すぎ、またこはるに会いたくなりました。

スタッフが部屋にこはるをつれてきてくれました。

普通の赤ちゃんと同じようにバスタオルにくるんで抱っこして連れてきてくれました。
すごく嬉しかったです。

こはるを自分のベッドに寝かせ、添い寝をしました。

爪がしっかりあって、眉毛も生えてる、眉毛の形がパパにそっくり、鼻も高くてパパ似だなとか、とにかくこはるをたくさん感じたくて、たくさん写真をとって、話しかけて過ごしました。


ずっと一緒にいたいし、離れたくない、今晩一緒に寝たいなとも思いましたが、普通の室温のお部屋にずっといたら、こはるの体に良くないことはわかっていたので、30分ほどして再び預かってもらいました。

自分の体も休めなければいけないのは頭ではわかっていましたが、でも色々と考えてしまいます。

もうお腹にはこはるはいないんだ。。。


あんな可愛い我が子だったのに、こんな選択をしてしまった自分、なんて罪なことをしてしまったのだろうと感じていました。

睡眠剤をもらい飲みましたが、眠れない夜を過ごしました。
入院する数日前に、夫から「赤ちゃんの名前を考えたから、この中から選んでほしい。」と言われました。


3つほど、候補の名前が並んでいました。

その中で、これがいい!!っと直感で感じた名前、、、


    「心遥(こはる)」

遥か彼方、遠くに離れてしまっても、心はずっとそばにいる、そんな意味があります。


私たち家族がいつでもこはるのことを思い出して、話せるように、その日から家族みんなでこはるちゃん、こはちゃんと呼ぶようになりました。


今はもう火葬を終えて、可愛い我が子、こはるは小さなお骨になってしまいました。

が、いつでもこはるを感じていたいので、こはると同じ大きさのくまさんのぬいぐるみを買いました。

今は長男と次男が、時には奪いあいながらお世話をして可愛がってくれています。

そして次の日


朝7時ごろから処置がはじまりました。まずは硬膜外麻酔を入れてもらいました。

その後陣痛誘発の膣錠1つ目を挿入しました。

30分ほどしたらモニター上小さな張りがではじめました。
日勤の助産師さんが進行を確認するために内診した際に、ミニメトロが抜けました。


お腹を触り、「ごめんね、、、苦しいよね。」と何度も何度も心の中で話しかけていました。


助産師さんが何人か交代できてくれ、世間話をしてくれたり、私の思いをきいてくれたり、とにかく一人にならないように配慮してくれているのが伝わりました。


10時すぎに2つ目の膣錠をいれました。

「もうすぐお別れなんだな。妊婦じゃなくなるんだな。」と思うと胸がしめつけられる思いがしました。
お腹を触りながら「ごめんね。苦しいよね。」と何度も話しかけました。

自分が決めたことなのに。。。



昼になり、少しずつお産も進んできました。


子宮口も柔らかくなって開いてきたため、人工破膜をしてさらに分娩をすすめることになりました。

おそらく破膜をしたらすぐに分娩になるだろうと先生にいわれていたので、足をひろげ、清潔なシートを敷いてもらい準備が始まりました。

ちょうどその頃夫も病院に到着し、少しだけ顔をみることができほっとしました。

夫は病室で待っていてもらうことになりました。

入院③〜人工死産〜へつづく