All Color ニッポンの刑務所30 | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

日本全国にある刑務所の中から30施設を

 

選び出して撮影された『塀の中』の生活を

 

ありのままに写しだした写真集です。

 

受刑者達の『つぐないの日々』に加えて盆踊りや

 

運動会などのイベントも収録されております。

 

 

 

 

 

本書は世にも珍しい日本の刑務所内を撮影した

 

写真集です。

 

刑務所用語で『娑婆』とは一切隔絶された世界を

 

ここまで克明に写し出したものは他ではあまり知らな

 

かったので、そのあまりのリアリズムに久しぶりに

 

写真集を見て打ちのめされました。

日本最大の刑務所と称される府中刑務所に始まって、

 

あの佐藤優も512日泊513日間を過ごした(あくまでも

 

彼がその大半を過ごしたのは旧いほうですが)

 

東京拘置所。

 

新設された東京拘置所は最新の設備が行き届いていて、

 

まるで近未来の要塞のようでありました。

日本最古の刑務所として現在も稼動し続けている

 

奈良少年刑務所。

 

ここでは地下の様子も写されているのですが、

 

本当に中世の『牢獄』を思わせるものがあり、

 

ページをめくりながら背筋が寒くなる思いでした。

これは僕も本書を見るまでは一切知らなかったの

 

ですが、民間企業との共同運営されているという

 

美祢(みね)社会復帰センター。

 

ここは男子収容棟と女子収容棟があるそうで

 

その施設全体のハイテクぶりや、ビジネスホテルを

 

訪仏とさせる部屋の中。

 

さらにはパソコンなどを駆使し、そっち方面の

 

資格取得も盛んだそうで、これにも本当に驚いて

 

しまいました。

さらには、女子刑務所。

 

男である僕が入ることは決してないその

 

『閉ざされた空間』

 

には厳しい

 

『つぐないの日々』

 

を送る女性受刑者とそのなかであくまでも『女性』

 

である一面がうかがえて、なんとも言いようもない

 

ものを覚えてしまいました。

千葉県は市川市にある交通刑務所。

 

年季の入った二段ベッドで寝起きをする囚人たちが、

 

刑務間立会いのもと、朝の定期点検を受けている

 

ところに、ドストエフスキーの『死の家の記録』を

 

連想させるものがありました。

圧巻だったのはやはり、重い罪を背負って

 

収監されている人間ばかりがいるLA長期刑務所で

 

撮影された写真で、運動会の場面が多いのですが、

 

その全員が一丸となって協議に励む姿をほほえましく

 

見ても、受刑者一人ひとりが出すただならぬ雰囲気が

 

写真から伝わってきて、戦慄を覚えました。

巻末のほうに収録されているのは少年院であり、

 

和泉学園では法律の改正上、12歳から収容可能

 

であるということや、東北少年院で、資格取得のために

 

夜遅くまで勉強に励んでいる写真を見ると、


『これは負けてられないな』


という気持ちになってきます。

 

日頃、知る機会のない話ですので、著者の執念に感謝の

 

意をこの場を借りて表したいと思います。


※追記

著者の外山ひとみさんは2014年6月1日、急性骨髄性

 

白血病のため東京都内の病院で死去しました。

 

享年55歳。この場をお借りしてご冥福を申し上げます。

 

合掌―。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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