グッバイ艶 | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

自伝的なモチーフを使った恋愛小説です。

 

彼と奥様の艶の愛と憎しみにあふれる

 

生々しい描写に、圧倒されました。

 

これは一気に読むべきだと思います。

 

少し大田光・光代夫妻と被る所があるかも

 

しれません。

 

 

 

 

 

この小説は自分と自分の奥様を題材に二人の軌跡を

 

愛憎をこめてつづった恋愛小説といえるもので、

 

僕は一気に読み終えてしまいました。

 

主人公と艶との出会いは、 一九六八年冬。25歳で童貞

 

だった僕は、女流作家の

 

『ウィスキー一本でだれとでも寝る女』

 

という紹介で彼女の『子分』という女性にあって見ないかと

 

言う誘いを受けて、彼女の住んでいるアパートに行き、

 

そこで彼女と出会い、男と女の関係になってしまいます。

 

そこからが25年にわたっての愛憎をこめた二人の物語の

 

馴れ初めとなります。

 

酒を飲んでは意味不明の言動を繰り返し、作者の目の前で

 

自殺未遂などのエキセントリックな行動に出るかと思えば、

 

盲目的なまでに愛を求め、それが差し出されると、今度は

 

それを全否定して関係を壊しにかかる。


そんな艶がにくくもあり、また愛おしくもある。

 

作者と同じように彼女の魅力と危うさに振り回されたまま、

 

最後まで連れて行かれた、という感じでした。

 

主人公である作者も劇団をを運営したり、放送作家として

 

ものすごい量の仕事をこなす中で劇団の女優に手を

 

つけたりなんだりで、その辺はすごくムチャクチャな中盤に

 

なっていくのですが、艶が酒で体を壊し始めたあたりから

 

物語は急展開を迎えます。

 

彼女が残した日記の中に記されてある文章から、

 

彼の知らないもうひとりの彼女の存在が浮かび上がってきて、

 

自分と彼女との25年間は一体なんだったのだろうか? 

 

そう自問自答する筆者。その姿がたまりませんでした。

 

そして、日記の中に破り捨てられたページがある箇所が

 

あって、物語の最後のほうでそれがわかるのですが、

 

彼女を形作ったある『できごと』がそこには記されていて…。

 

そうか…。こういうことがあったのかと作者と同じように

 

ショックを受けてしまいました。また、破った箇所を隠している

 

箇所がなんとも彼女らしくて、少し噴き出してしまいました。

 

ここに書かれてある男と女の姿はなんともむき出しで

 

生々しいんですけれど。ある程度年のいった人にこそ、

 

読んでほしいなと、切に願っております。

 

 

 

 

 

 

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