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華紡ぎ -恋絵巻-

恋の迷い道も二人ならば怖くはないだろう?

こんばんは、神子殿。

正月を迎える準備は進んでいるかい?

ああ、その前に神子殿は異国の祭りを

楽しむのだったね。

 

 

やぶ椿がとても美しい形をしていたから、

君にも見て頂こうかと思ってやってきたのさ。

葉の艶もなかなか良いだろう。

椿餅の時に使えそうだ。

 

 

 

めじろもよく見かけるようになったかな。

 

 

やはりめじろは、梅や桜の枝に止まっている方が

絵になるような気がするが、どうだろうか?

 

 

ところで前回「方相氏」の事を

少しばかり触れたと思うが覚えているかね。

 

熊の皮を被り、黄金の目を四つある面、

黒衣に朱の裳を身につけた方相氏という呪師の役を

大舎人が務め、矛と盾を持って疫鬼を追い払う……

 

というところまでは話したね。

 

 

大晦日に方相氏は背後に童子を従えて、

貴族達は桃の木の弓で葦の矢を射って

宮中を周り目に見えない鬼を追い出す役割を担う。

 

(写真はお借りしたよ)

 

 

怖ろしいというよりも、何処か珍妙な面だろう?

手にしている矛で地を打ち鳴らし

「鬼やらい、鬼やらい」と大きな声で唱えながら歩き

四門まで追い回して内裏の中にいる鬼を

退散させるというわけだ。

 

大舎人は仕事柄体も声も大きい人間が多いから、

大晦日の内裏は少々やかましく感じるが、

それも全て内裏…主上の為だから

我慢せねばなるまい。

 

 

その大晦日より前にやっておかなければ

ならないのが煤払いかな。

 

煤払いは自分が新年を気持ちよく過ごすために

するのではなく、正月の神である歳神を

迎え入れるために清めるのだからね。

師走の十三日は掃除始めをするには

縁起が良い日とされている。

終わらせるのは二十八日までが良い。

 

理由は神子、殿もご存知だろうが、

九は(苦)を連想させるから避けるべきだし、

三十一日は正月の前日で、

掃除をした後に飾り物をすると

一夜飾りとなってしまう。

出来るだけ二十八日までに煤払いを終わらせて、

飾り付けは清め終わった二十八日、

もしくはそれが不可能だった場合は

三十日に飾るのが通例だ。

 

内外を清める煤払いは大事なことだから

手抜きはしない方が良い。

 

ただし無理をして怪我をしないように

充分に気を付けたまえ。

白魚のような君の指が傷つくのを

見たくはないからね。

 

 

人間というのは身勝手な生き物だから、

年の終わりには反省することばかりだ。

無論この私も。

 

 

私が此処にいる意味がまだあるようならば、

新たな年も少しは顔を出すつもりでいるよ。

まぁ、気が向けの話だが…ね。

 

少しばかり早いが、良い年を迎えておくれ。