第三種接近遭遇。
そこは落ち着いたJAZZバーだった。中華街の外れにぽつんと立つ背の低い雑居ビルの1階、控えめなネオン管に彩られたその店を、僕は「ぴあMAP」で見つけだしたのだ。
隣の席の声が聞こえない程度の音量で流れるJAZZをバックに、僕らは会話を楽しんでいた。10年近く前の昔話から最近あった面白い出来事。北国での学生生活の逸話を披露したあと、彼女の仕事での失敗談などを拝聴する。お互いにあった硬さが、バーボンウィスキーとオードブル、そして背景に流れるJAZZのおかげでいつの間にか消え去り、僕らはいつか、気の置けない旧い友人同士になっていた。
正直な話、そのときの僕は、Eとのこれから先を期待したりはしていなかった。いや、まったく想像もしなかったといえば嘘になる。が、この水準で首都圏でのOL生活を4年以上も続けていれば、決まった相手がいない方が不思議だろう。もともとが高嶺の花。こうして会って歓談できるだけでも、もうお腹一杯だったのだ。
だからこそそのときの僕の衝撃は、もはや筆舌に尽くしがたい。
飲めないかも、といいながらも、Eは思った以上に強かった。おそらくは3時間以上も話し込み、酔っ払いの二歩手前あたりまで至った僕らは、ようやく店を後にし、酔い覚ましに港の公園へと足を伸ばしていた。
初夏の公園のベンチは軒並みカップルで埋まっていたが、僕とEの会話はまだ続く。趣味が合うのか気が合うのか。いやそれ以上に聞き上手な彼女が、普段の数倍テンションが高い僕の話題をうまくコントロールしてくれていたのだろう。入梅前の湿度の低い夕風で火照った頬を冷ましてくれる。公園をゆっくりと一巡りしてから、僕らは元町へと向かう。その先は、もう駅だ。
夜の商店街は開いている店も人通りも少なく、洒落た形の街灯だけが足元の石畳を照らしている。話し疲れたのか、僕らは無言で歩いていた。でもだからといって気持ちが離れている感じじゃない。むしろ言葉を発しないところで寄り添っている安心感、そんなものを勝手に僕は感じていた。反芻するに、少なくとも大きな失点はなかったはず。また誘っても応じてくれるかもしれない。そんなことを考えていたと思う。そのとき、突然右手がぬくもりに包まれた。
隣の席の声が聞こえない程度の音量で流れるJAZZをバックに、僕らは会話を楽しんでいた。10年近く前の昔話から最近あった面白い出来事。北国での学生生活の逸話を披露したあと、彼女の仕事での失敗談などを拝聴する。お互いにあった硬さが、バーボンウィスキーとオードブル、そして背景に流れるJAZZのおかげでいつの間にか消え去り、僕らはいつか、気の置けない旧い友人同士になっていた。
正直な話、そのときの僕は、Eとのこれから先を期待したりはしていなかった。いや、まったく想像もしなかったといえば嘘になる。が、この水準で首都圏でのOL生活を4年以上も続けていれば、決まった相手がいない方が不思議だろう。もともとが高嶺の花。こうして会って歓談できるだけでも、もうお腹一杯だったのだ。
だからこそそのときの僕の衝撃は、もはや筆舌に尽くしがたい。
飲めないかも、といいながらも、Eは思った以上に強かった。おそらくは3時間以上も話し込み、酔っ払いの二歩手前あたりまで至った僕らは、ようやく店を後にし、酔い覚ましに港の公園へと足を伸ばしていた。
初夏の公園のベンチは軒並みカップルで埋まっていたが、僕とEの会話はまだ続く。趣味が合うのか気が合うのか。いやそれ以上に聞き上手な彼女が、普段の数倍テンションが高い僕の話題をうまくコントロールしてくれていたのだろう。入梅前の湿度の低い夕風で火照った頬を冷ましてくれる。公園をゆっくりと一巡りしてから、僕らは元町へと向かう。その先は、もう駅だ。
夜の商店街は開いている店も人通りも少なく、洒落た形の街灯だけが足元の石畳を照らしている。話し疲れたのか、僕らは無言で歩いていた。でもだからといって気持ちが離れている感じじゃない。むしろ言葉を発しないところで寄り添っている安心感、そんなものを勝手に僕は感じていた。反芻するに、少なくとも大きな失点はなかったはず。また誘っても応じてくれるかもしれない。そんなことを考えていたと思う。そのとき、突然右手がぬくもりに包まれた。