墓なんかどこでも良かったんだよ。KCに埋めないでくれとか言ったかもしれないが、本当のところ、そんなことは周りで好きなようにすればいいと思ってた。そういうセンチメンタリズムは持ち合わせてないんだ。まあ、いろんなことで人生に絶望した時期もあったけれど、俺はホーンを愛していた。それだけで充分だ。そうそう、墓の話だったな。実を言うと、俺は墓の中には居ないんだよ。わたしの~おはかのまえで~♪わっはっは。前にテレビで見た。テレビは大好きだ。 考えてみてくれ、俺はラジオで育って来たんだ。それが、ある日突然にテレビってもんが世の中に現れた。そりゃビックリだよ。夢中で見たもんだ。生まれた時からテレビがあって当たり前というのとは全然違う。そもそも俺は動いてる物を見てるのが好きなんだよ。馬とかな。車とか汽車なんかも。だから映画も大好きだった。テレビなんてのは、もうすべてが動き回ってるんだから好きで当たり前だろう。小さな頃は絵本も好きだったけど、絵本ってのは黒人の子供たちのために書かれたものじゃないんだよ。あくまでも白人の子供のためのものなんだ。それが判ってからは、絵本を見るのも嫌になったな。まあ、大ざっぱに言えば、そういういろんなことが俺を音楽に近づけてったという訳だ。周りがどんなふうに捉えようと、演ってる側から言えば音楽は完璧にパーソナルなもんだからな。自分自身の経験、知識、知恵で演るもんだから。(この項終り)